【BL二次小説】 モテ期、襲来⑤終
荒「……!!」
自分が転倒したのに続き、十数人の部員が落車横転した惨状を目にし、血の気が引く荒北。
荒「大丈夫かみんな!新開!真波!」
慌てて駆け寄る。
新「大丈夫だよ。そんなにスピード出てなかったし」
真「びっくりしただけです」
起き上がる部員達。
なんとかみんな擦り傷程度のようだ。
荒「……」
ホッとする荒北。
「あ、あの……」
「ごめんなさい……」
荒北ファン達がオロオロとして謝りに来る。
荒北はカッと頭に血が昇り、声を荒らげた。
荒「観戦マナーも守れねェ奴がオレのファンを名乗ンじゃねェ!!」
「!」
「!」
荒「消えろ!オマエら全員!二度とオレの前に現れンな!!」
「……」
「……」
荒北が本気で怒っていると認識し、荒北ファン達は涙ぐみながらバタバタと帰って行った。
~医務室~
荒「……」
傷の手当てをしている部員達に向け、荒北は思い詰めた表情で謝罪する。
荒「みんな、すまなかった。オレの責任だ。……こんなことになる前にちゃんと対処すべきだった」
荒北は床に膝をついた。
真「!」
黒「荒北さん!」
新「やめろ靖友!」
グイッ。
荒「!」
次に両手を床につけようとしたが、その腕を福富が掴んだ。
福「土下座するほどの事ではない。立て、荒北」
荒「福……」
福「事情は聞いた。我が部は比較的ファンが多い。今後も増えることを想定し、改めて部としての指針を作成する良い問題提起となった」
荒北を引っ張り上げ、両肩を掴む。
福「部を辞めようなど思うな。オレが許さん。オマエがその指針を作るんだ」
荒「福ちゃん……」
福富に見透かされ先手も打たれ、荒北は大人しく従うしかなかった。
新「靖友!」
医務室を出ようとする荒北に、新開が駆け寄る。
新「オレも手伝うよ。一緒に作ろ」
荒「新開……」
真「オレも手伝いまーす」
黒「抜け駆けはさせませんよ新開さん」
新「ちっ」
医務室を出ると、荒北ファン達が廊下にズラリと立っていた。
荒「!」
「あの……アタシ達……」
「お見舞いに……」
みんなしょんぼりしている。
反省したようだ。
荒「……」
しかし荒北はもうこりごりだった。
隣りに立っている新開の首に両手を巻き付け、叫んだ。
荒「オレはァ!新開に惚れてンの!!」
新「!!」
黒「!!」
真「!!」
「!!!」
「!!!」
「!!!」
場が凍りついた。
「……」
「……」
「……」
ポイ。ポイ。ポイ。
ボト。ボト。ぐしゃ。
荒北ファン達は、うちわやタオルをその場に放り出し、無言でゾロゾロと去っていった。
荒「……やった……!」
やっと追っ払うことに成功し、荒北は新開の首から腕を外した。
新「靖友……嬉しいよ。実はオレもずっと前からおめさんのこと……」
頬を赤らめモジモジする新開。
荒「今のァ嘘だ。おかげで助かったぜ新開!あンがとな!」
新「え」
荒北は元気を取り戻し、スキップしながら立ち去って行った。
新「……」
ポン。
黒田と真波が新開の肩に手を置く。
黒「贅沢スよ新開さん」
真「オレも嘘でもいいから言ってもらいたいです」
新「……」
新開はポロポロと涙をこぼすが、その場にもう一人泣いている者がいる。
泉「アブぅ……」
徹夜で一生懸命作った荒北グッズは足で踏まれ無残なボロクズと化していた。
嵐のように訪れた荒北のモテ期は、たった数日でまた嵐のように去って行った。
しかし荒北の心は晴れ晴れとしていた ──。
おしまい