海の都の表玄関から
「ヴェネツィアという街は
空からでも、陸からでもなく
海から入ったときに
一番美しく見えるように設計されている」
塩野七生の「海の都の物語」で読んだ
そんな意味合いの一文が
長いあいだずっと胸に残っていた
4度目のヴェネツィア滞在で
やっとめぐってきた
海の玄関口から出入りするチャンス
地中海クルーズには
いくつもの航路があるが
ヴェネツィアから出港するルートは
かつての海の覇者の時代を追体験できる
とくべつなものだ
いつもは景色に見向きもしない息子も
デッキにへばりついて
船が港を出てからの数十分間
流れゆく街並みをずっと見つめている
「お母さん。ヴェネツィア、
もうずいぶん見えなくなっちゃったね」
「でも、まだ旅は始まったばっかりよ」
これから始まる旅への期待と
航海の無事を祈って
溢れんばかりの旅情を、胸に
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