ゲームにおけるモーションデザインの役割

もくじ
・モーションデザイナーって何をするの？
・デザインのコンセプトが決まったら
・アニメーションとは違うの？

ゲームにおける3DCGデザイナーの役割は大きく分けて『モデル』『背景』『モーション』『エフェクト』の４つに分類されます。

その４つの中で、私は『モーション』デザインを担当しています。

あまり知られていないモーションデザイナーの仕事を紹介することで、より深くゲームを楽しむきっかけになれば嬉しいです。

モーションデザイナーって何をするの？

『モデル』デザイナーがモデリング（造形）した3Dキャラクターを動かすのが、私たち『モーション』デザイナーの仕事ですが、ただ動かすだけが全てではありません。

ゲームの企画や、デザインコンセプト、仕様に合わせて最適な「動き」をデザイン（設計）していきます。

例えば、マリオの場合。
私はマリオシリーズの制作に関わったことはありませんが、あくまでゲーム開発における一般論としてお読みいただければと。

歴史も長く、シリーズも多いので一概には言えませんが、マリオというブランド化されたキャラクターにおいては『マリオが何をするゲームなのか』と言うことが企画のコンセプトになることが多いのではないでしょうか。

王道の横スクロールなのか、マリオ64から連なる３Dアクションなのか、レース、パーティ、RPG、ゴルフ、テニス。様々な企画によって、どのような『動き（モーション）』が必要になるのかは大きく変わってきます。

マリオがテニスをするとしたらどんな動きをする？ルイージとはどんな違いがあるの？それを表現するためには何が必要？どれくらいの数が必要？なにがOKでなにがNG？　などを考えて、ゲーム全体を考えたときに必要なデザインを導き出します。だってマリオテニスでゴルフのスイングをしていたらおかしいですから。

このような動きのデザインは、コアメンバーとなる１～２人くらいで取り仕切ることが多いです。キャラクターの数が多い場合には、１キャラにたいして担当者が一人ついて、全体をリードデザイナーがチェックするということもあります。プランナーと組んで開発する場合もあるでしょう。

デザインのコンセプトが決まったら

ようやくモーションを作ることができます。基本、アクション、リアクション、エモーションなどのカテゴリを設定し、分担して作業することが多いように思います。

基本（動く、止まるなど）
待機、歩き、走り、ジャンプ

アクション（相手にリアクションを要求するものなど）
攻撃、特殊行動、必殺技

リアクション（プレイヤーの状態変化など）
ダメージを受ける、倒れる、死ぬ

エモーション（直接ゲームに影響を及ぼさないものなど）
あくびをする、まわりを見回す、手を振る

これだけではないですが、ざっくり言うとキャラクター１体に対して、最低でもこれくらいの物量が必要かなー？って感じのものを書いてみました。

ソーシャルだと１体50モーションもあればかなりリッチなほうですが、PS4などのハイエンドなゲームでは、１体あたり1000モーションくらい用意されていたりします。気が遠くなる作業です。

そのモーション一つ一つが、最高の体験をもたらしてくれるように、細かく調整され、ユーザーに届けられるのです。

アニメーションとは違うの？

私は映像のアニメーションと、ゲームにおけるモーションは別ものだと考えていますが、共通する部分もあります。

重心はとれているか、生物として破綻していないか、なにをしているのか伝わるか、など「キャラクターを動かす」という基礎的なところはどちらも同じです。

では両者の大きな違いなにか。それはアニメーションは「見るもの」、ゲームモーションは「触るもの」だということです。

アニメーションは、見ていて気持ちいいことが重要です。

対してゲームモーションは、ゲームをプレイしてストレスがない事が重要な要素となります。ボタンを押してからアクション発生するまでの時間や、そのアクションに対する納得感、テンポやリズム、触っていて気持ちいいと感じてもらう事がゲームにおいて優先されるべき要素だと私は考えています。

勘違いされやすいことですが、ゲームにとってレスポンスは命ですが、レスポンスの速さが命ではありませんし、ゲームによって求められる気持ちよさは変化します。あえて、遅くしたり、違和感を出したり、かっこよく可愛くしすぎないことで、そのゲームが最高に気持ちよくなるようにデザインすることが重要なのです。

ゲームの最高なところは、体験型の娯楽だということです。

全てのデザインや設計がゲームを豊かにすると同時に、人生をも豊かにする事を信じて日々モーションをデザインしています。

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