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三日坊主日記 vol.296 『朝焼けと超ハイスピード撮影』

今日の朝焼けは驚くほど美しかった。


自慢できることではないが、僕はそんなに早起きではない。他人と比べられないんでよく分からないが、だいたい7時頃に起きることが多い。が、今朝は6時前に目が覚めた。そして窓の外を見ると見事に空が焼けていた。東の空全体をなんともいえない色に染めて、この世のものとは思えない美しい風景を作り出している。


すぐに飛び起きてカメラを構えるんだけど、僕はワイドレンズを持っていないから空全体を写せない。iphoneに持ち替えてワイドで撮ると空全体は入るが迫力に欠ける。人間の眼というのはつくづくよくできていて、最適のサイズに補正して最高の印象で美しいものを見ることができる。だけど、それをレンズで再現することはなかなか難しい。


仕事で朝焼けを狙うことが稀にある。朝焼けを撮るには、当然ながら夜明け前からスタンバイする必要がある。つまり、暗闇で準備をしなければならないということだ。だから、夕焼けを撮る方が容易なんだけど、どうしても朝焼けを撮らなければならない時もある。


朝焼けといえばいろんな意味で忘れられない仕事がある。2015年にルーク・ドナルドというプロゴルファーを撮影するためにフロリダのパームビーチへ行った。ルークが契約するスポーツメーカーのCMを撮影するためだ。ルーク・ドナルドというのはイギリス人ゴルファーで、2011年に欧州PGAツアーとアメリカPGAツアーの同時賞金王という快挙を成し遂げた凄い人である。


親日家で何度も来日しているし、僕も日本で会ったことがあるんだけど、この時は彼が滞在しているフロリダへ行くことになった。ルークはとても美しいスイングフォームを持つ人で、その時の企画は、Phantomという超ハイスピードカメラで彼のスイングを捉えるというシンプルなもの。シンプルな企画だけに映像の美しさは絶対に必要なので、背景の木々の形や池の配置、そして光の具合を十分にロケハンして、時間と場所を正確に決めて撮影に臨んだ。


例えばこの場合、なぜ夕焼けでなく朝焼けを狙う必要があったのか。まず、ゴルフ場をお借りするので、夕方だとお客さんが居る可能性が高い。一般のお客さんが居るのに撮影を優先することはできないので、必然的に朝焼け狙いになる。さらに早朝には気温の上昇につれて靄が発生する可能性がある。その美しさは時に息を呑むほどで、計算はできないがそこに賭けたくなる。そして、仮に発生しなくても朝の静寂はカメラに映らないようでちゃんと映るような気がするのだ。


そして本番。スタッフ全員暗いうちから準備を始める。スタッフは僕以外すべて現地の方々。撮影部と制作部はロスから、照明部とVE(ビデオエンジニア)はマイアミからそれぞれやってきている。アングルを決め、ルークも現場に入り、あたりは徐々にしらみ始める。あとは空がキレイに焼けるのを待つだけだ。と思ったらVEのおじさんがとてもとてものんびりと準備をしている。日除け用の大きなテントを建て、機材を並べ、モニターを並べ、配線をし、ディレクターチェアを用意する。


いやいやいや、早くしようぜ!太陽が出る前がシュートのタイミングだ。椅子なんかいらないし、なんならモニターもいらないんで、とにかくVTRだけ繋いでくれ。とにかく急げ。と、拙い英語でいってもニコニコ笑っておじさんはまったく動じない。カメラマンに急ぐように伝えてくれと頼んでも、制作部にいっても、彼には彼のやり方があるといって困った顔をするだけだ。結局、シュートしたのは若干陽が昇ってから。薄暮というにはちょっと遅かったんだけど、それでもキレイな映像が撮れたんでまあ最低限の仕事はできたのでよかったのではあるが。


薄暮狙いでスタンバイしているのにも関わらず、薄暮に間に合わないなんて聞いた事がない。この時ほどもっと英語を勉強するべきだと強く思ったことはないのだ。それにしても、アメリカのスタッフというのはみんなあんな感じなんだろうか。ユニオンが強かったり、労働条件云々あるのはわかるけど、急いで欲しい時には急いで欲しいのである。


ちなみに、Phantomというのは当時でも15000fpsとか20000fpsとかで撮影できるカメラで、今ならその倍のスピードで撮れるんじゃないだろうか。普通の映像は30fpsなので、何十倍とか何百倍ハイスピードで撮れるから、ゴルフボールの打ち出しもちゃんと映る凄いカメラなのだ。


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