三日坊主日記 vol.107 『スエズ運河か喜望峰か』
カール・ハンセン&サンの椅子を買った。
イキっている訳でもないし、自慢したい訳でもない。全くもって分不相応なのだが、前々から欲しかったので奮発した。座面の高さをうちのテーブルに合わせてセミオーダーしたので、本国で作って送ってくることになる。到着まで約6ヶ月かかるらしい。ろ、ろっかげつ?なんでそんなに掛かるのだ。一瞬耳を疑ってしまった。
曰く、スエズ運河が通れないらしい。イスラエルによるガザ地区への攻撃、パレスチナ人民を救済するという目的で、イエメンの反政府派武装組織フーシ派がスエズ運河を航行する民間の船を攻撃しているというのだ。
スエズ運河を通れない船はアフリカ大陸をぐるっと迂回するルートを取る。いわゆる船の墓場として知られる喜望峰を回るルートだ。その場合、最低でも10日以上、数千キロのロスになるという。リスクが高いので荷主も船主も躊躇して、なかなか出航までいかないのかも知れない。
喜望峰へはもちろん行ったことがない。しかし暴風と暗礁で航行が困難だと言うことはなぜか昔から知っている。子供の頃テレビか何かで見て、強烈に印象に残っているのだろう。
南緯40度以南の地球を周回する強風を遮るモノがなく、常に吹いていることから「吠える40度」と呼ばれているそうだ。さらに南へ行けば行くほど風の強さは増し、南緯50度以南は「狂う50度」、60度以南になると「絶叫する60度」と呼ばれるらしい。波の高さも何十メートルにもなると聞いたことがある。僕は海が恐ろしいので(泳ぎは得意だけど海が怖い)、想像しただけで震え上がる。
僕が買った椅子がこうやって世界情勢に翻弄され、スエズ運河ルートで来るのか、それとも命懸けで喜望峰を越えてくるのか。たかが椅子かも知れないが、壮大な物語があるのだ。
と、呑気なことを言ってる場合ではない。椅子はさておき生活に欠かせないありとあらゆるものが足止めされている。そして罪のない多くの人々が犠牲になっているこの状況が、一日も早く収束することをお祈りする。
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