三日坊主日記 vol.367 『30年目のあの日』
今年もまたあの日が来た。
下から蹴り上げられるような衝撃で目を覚ましたあの朝。それが地震であることがわかったもののなにをしてよいのやら分からずとりあえずリビングに置いてあった熱帯魚の水槽を押さえていたら、妻が幼いふたりの息子におおいかぶさりながらこっちきてと叫ぶ声を聞いてやっと我に帰ったあの朝。そしてテレビをつけるとまるで現実とは思えない様子が映し出されたあの朝。僕が住む地域は震度4だったが、それまでに味わったことのない恐怖だった。
あの年は演出家としてフリーになって確か3年目だったと思う。仕事の依頼が増えてきて、大きな仕事をさせて貰ったり、東京の会社から声がかかったり。前途洋々というか有頂天になってちょっと勘違いし始めた頃だったのではなかったか。
しかしあの日、天と地がひっくり返るような状況を経験して自分は何ひとつ世の中の役に立てていないことがよくわかった。みなが命をかけてギリギリのところで助け合う姿をみて、本当に自分の無力さを嘆いた。
あれからもう30年も経つのか。その間にこの国は何度も何度も大きな災難に見舞われたけど、僕はあの日と同じようにやはり何もできなかったように思う。こんど同じようなことがもし起こっても、きっとまた何もできないんだろう。緊急時になにもできないのなら、せめて平時に世の中のためになれないものだろうか。
毎年そんなことを考えさせられる1.17。
合掌。