【読書記録】トリカゴ/辻堂ゆめ
24年前、日本中を震撼させた鳥籠事件。
母親によって、幼い兄妹が自宅で数年監禁。
保護された時、数羽の鳥たちと過ごしてた。
まるで、鳥籠のように…。
「鳥のように両腕を羽ばたかせる仕草をする。」
「歩き方がぎこちない。」
「人間の言葉を話さない。」
『日本初のアヴェロンの野生児発見』
保護されていた当時、マスコミはこぞって兄妹を取り上げた。
しかし児童養護施設で保護された1年後、彼らは何者かによって誘拐され、以後24年、姿を見たものはいない。
時は経ち24年後、強行犯捜査係に所属する里穂子は殺人事件未遂の容疑者であるハナを取り調べていた。
彼女は無戸籍だった。
事件を追う里穂子は無戸籍者たち15人が暮らす「ユートピア」の存在を知る。
そこで24年前の鳥籠事件にも繋がる手がかりがあると踏み、彼らとの接触を試みるが。。。
無戸籍問題、児童虐待、貧困問題。正直、これらを全て組み合わせて1つの作品にすることは無謀だと感じた。
しかしさすが辻堂先生。
ミステリ要素を含みながら社会問題に真っ向に立ち向かい、重圧感のある作品となっていた。
生まれてから当たり前に得られるものだと思っていた戸籍。
世の中にはそうではない人たちがいることを認識させられる。
自分自身がこの世に存在しているという証明。
それが戸籍である。
戸籍の取得と一口に言うけれど、そこには何重にも壁が立ちはだかる。
「日本人だという証明」
果たして私たちも日本人だという証明はできるのだろうか。
しかし、戸籍の取得にはこれが条件である。
彼らは戸籍のある人たちを「外の人」という。
里穂子たちは「ユートピア」の住人を「無戸籍者の国」と称する。
知識を持つことは大切だ。
しかし、知識を教授することは時に偽善となる。
日本が抱えている社会問題を多く取り上げ、しかも読み手にも考えさせるような構成となっている。
里穂子のような刑事がいれば。ではなく、里穂子のように行動できる人間になりたい。