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第5回 多変量解析を活用する/【連載】QuickCrossを使って“集計のコツ”をご紹介

「多変量解析」という名前を聞いたことはあるがどのような分析手法なのかよく分からない、分析手法の内容は知っているが計算負荷が高く困難な印象がある、といった方もいらっしゃるかもしれません。
連載の最終回では、多変量解析とはどのような分析手法なのか、そして「QuickCross」に搭載されている多変量解析機能を使ったコレスポンデンス分析や因子分析・クラスター分析についてご紹介します。

QuickCross(クイッククロス)とは?
マクロミルが独自開発した簡易集計ソフトです。どなたでも簡単な操作で、集計・分析ができます。マクロミルで実施したアンケートデータ以外にもExcelや他の集計ソフトで出力したデータを追加して分析することも可能です。現在、国内のべ1万人のマーケターの皆さまにご活用いただいています。


1.多変量解析とは?

多変量解析とは、複数の変数(質問)に関するデータをもとに相互関係を分析する統計的技法のことを言い、データを予測・要約・分類するための分析手法の総称です。

1.1多変量解析の手法種類

多変量解析には様々な手法がありますが、どの手法を選択するかは分析の目的と扱うデータの種類の組み合わせで異なります。
・分析の目的が「要約」か、「分類」か
・扱うデータの種類が「(※1)目的変数」か、「(※2)説明変数」か
・目的・説明の両変数が「量的データ」か、「質的データ」か

(※1)目的変数:「結果」となる事柄に関する変数
(※2)説明変数:「原因」となる事柄に関する変数

多変量解析についてはこちらでも詳しく解説しています。

2.コレスポンデンス分析~ポジションを視覚的に分析~

コレスポンデンス分析とは、複数のカテゴリー間の類似度・関連性を整理し、マッピングする統計的な 分析手法です。カテゴリー間の関連性を視覚的・直感的に把握でき、主にブランドとイメージのポジショニングマップを作成するときに用います。

例えば、掃除機メーカーA社とその他競合のイメージを比較する場合、まずは消費者にアンケートを取ります。アンケート結果は、下記のような数表(GT表)で出力されますが、行・列ともに数が多いことからデータの傾向を読み解くことが少し大変です。

そこでQuickCrossの「コレスポンデンス分析」を使ってポジショニングマップを作る事で結果を見やすくしていきます。

イメージ特性を読み解くのが難しいGT表

ここからはQuickCrossを使って、ポジショニングマップを作成する方法をご紹介します。

※QuickCrossでポジショニングマップを出力する手順
【STEP1】「多変量解析」ボタンをクリック
【STEP2~3】分析対象設問を選択
【STEP4】画面右上のマトリクスアイテムに移動
【STEP5】「実行」ボタンをクリック→ポジショニングマップが出力される

上記の手順を行うと以下のような結果を出力することができます。このポジショニングマップはイメージが近いもの同士を近くにプロットします。

マップ右側に丸く囲ったM・L・N・J・I社は、「モダンな」「新しい」「奇抜な」といったイメージと距離が近く、対してマップ左側に丸く囲ったC・E・F社は「なじみのある」「伝統のある」「落ち着いた」「無難な」といったイメージと距離が近いことがわかります。

ここでは2つの軸からの距離や配置を見ることで、消費者から持たれているイメージを明らかにすることができます。マップの上下軸と左右軸で反対のイメージの選択肢が配置されていますので、下図のように上下と左右に並ぶ選択肢を代表する名前を付けておくと、より特徴がわかりやすいマップになります。

ポジショニングマップ

また、軸の交点(軸1と軸2の得点が0となる真ん中の部分)から遠ざかるほど特徴が顕著であると読み取れます。交点に近いB社はあまり想起されるイメージや特徴がなかった、ということになります。

このコレスポンデンス分析を活用するには、アンケートの調査票を考える際の選択肢設計が非常に重要です。
例えば先ほどのマップでは、上部を「庶民的」、下部を「高品質」と名称をつけましたが、アンケートを取る時点で選択肢にこのような反意語(反対の意味の語)を置いておくと、軸の上下左右で特徴が分かれ、結果が読み取りやすくなります。

なお、QuickCrossの詳細な操作は、下記より動画でご覧いただけます。【QuickCross活用講座(検定・多変量解析編)】コレスポンデンス分析

3.因子分析~共通因子から潜在意識を理解~

市場調査におけるアンケートでは、性別や居住地域といった回答者の属性情報や、特定の商品の購入経験や広告接触などの情報を軸に分析することが多くあります。因子分析も統計的な分析手法の一つで、消費者の意識や志向といった「背後にある共通の要素(因子)」を抽出し、その影響度を数値化することで心的傾向を見出すことが可能です。

例えば、家電購入者の趣味・志向を把握したい場合、家電を購入する際の生活価値観や買い物の際の意識、情報感度など、因子分析で得たい因子を想定し、項目(要素)をいくつか用意します。

マクロミルのアンケートではスマートフォンを通じて回答されることが多いため、項目が多いと1画面に収まらず回答バイアス(偏り)が生じてしまうことがあります。そのため、1つの因子について4~5項目、合計で12~30項目くらいを推奨します。なお、調査票設計の時点で因子の想定がない場合は、因子分析の結果が上手く出ない場合があります。

項目(要素)

ここからはQuickCrossを使って、因子分析の実施手順をご紹介します。

※QuickCrossで因子分析を実施する際の手順
【STEP1】「多変量解析」ボタンをクリック
【STEP2~3】分析処理の「因子分析」を選択し設定
【STEP4~6】画面右上の因子分析アイテムに移動
【STEP7】固有値1以上を選択 ※特に因子の数を決めていない場合は「固有値1以上」で分析
【STEP8】「実行」ボタンをクリック→分析結果が出力される

上記の手順で実施すると、以下のような分析結果が出力されます。
QuickCrossでは、相関が強いとされる±0.4以上の因子負荷量(※)のセルに自動的にオレンジの色付けがされ、分析結果をスムーズに確認できます。
※因子負荷量・・・各設問と因子の間の相関の程度

ここではオレンジの色付けの数値を見ていき、調査票設計の時点である程度想定していた因子が出ているかを確認します。

例えば「因子1」であれば「地球生活を配慮した生活について真剣に考えている」「エコを意識した生活をしていると思う」等の得点が高いため、「エコ重視」の特徴を把握することができます。このようにそれぞれの因子の中で、得点の高かった質問文から因子を読み取り、全ての因子名を付けていきます。

因子負荷量

ここからは、QuickCrossに因子名の登録を行います。

※QuickCrossに因子名を登録する際の手順
【STEP1】「多変量解析」ボタンをクリック
【STEP2~3】分析結果の一覧に先述して実行した因子分析の結果が保存されているので、「因子分析」を選択し「編集」ボタンをクリック
【STEP4】「エコ重視」と入力
※4つの因子を入力する際には、1つ質問文に入力完了後「次へ」をクリックし編集をする
【STEP5】最後の因子名の登録が終わったら「登録」ボタンをクリック

これで因子分析は完了です。
この後は共通の特徴を持つグループに分ける「クラスター分析」を解説します。

QuickCrossの詳細な操作などは、下記の動画にてご覧いただけます。【QuickCross活用講座(検定・多変量解析編)】因子分析

4.クラスター分析~集団の中から共通の特徴を持つグループに分ける~


クラスター分析は、サンプル集団の中から、共通の特徴を持つグループに分ける統計的な分析手法です。アンケート項目では取りづらい回答者の心理や特徴別におけるグルーピングが可能です。

ここからは目次3で先に行った因子分析の因子アイテム(以下のSTEP5)を選択し、QuickCrossでクラスター分析を行います。ここではクラスター数を4つとしていますが、数を変えて何パターンか出力し、最適なクラスターを選択することもできます。

※QuickCrossから「クラスター分析」の「分析結果」出力する際の手順
【STEP1】「多変量解析」ボタンをクリック
【STEP2】分析名に先述して実行した因子分析用のアイテムが保存されているので、「因子」を選択
【STEP3~4】分析処理の「クラスター分析」を選択し「設定」をクリック
【STEP5~7】先述した因子分析のアイテムを選択肢、画面右上のクラスターアイテムに移動
【STEP8】クラスター数をプルダウンで「4」を選択
【STEP9】「実行」ボタンをクリック→分析結果が出力される

上記の手順で実施し、出力された分析結果のうち、「クラスター内訳」を見ていきます。下図の「データ数」と「有効データ数に対する割合」は数値に極端な偏りがないかを確認します。例えば「データ数」の最小は124で、最大は283となり、ここでは偏りはなく許容範囲とします。

次に「有効データ数に対する割合」は10%を切っていないかどうかを確認します。もし10%を切る場合はクラスターの数を(4つ→5つに)変えて、再度分析します。

クラスター内訳

続いて、分析結果の「クラスター重心」を見ていきます。クラスター重心とは、各クラスターに所属するサンプルの因子得点の重点のことで、相対的に見て値が大きいとその因子の特徴が強いと言えます。

横軸には目次3で算出した因子名「エコ重視」「最新家電好き」などが確認できます。縦軸にクラスター1~4があり、ここではクラスター重心の高低を読み取りやすいように、予めExcelの条件付き書式を用いてプラスは青色、マイナスは赤色で表示しています。この色付けを元にクラスター重心の高いところ(青色)と低いところ(赤色)に注目し特徴を読み取りクラスターに名前を付けていきます。

ここでのクラスター分析結果は、クラスター1は「エコ・口コミ重視」、クラスター2は「プレミアム志向」、クラスター3「家電興味なし」、クラスター4「家電好き」となります。

ここからは最適なクラスター数と名前を決めたらQuickCrossにクラスター名を登録します。

※QuickCrossにクラスター名を登録する際の手順
【STEP1】「多変量解析」ボタンをクリック
【STEP2~3】先述して実行したクラスター分析の結果が保存されているので、「クラスター」を選択し「編集」をクリック
【STEP4~5】選択肢に先に決めた4つのクラスター名「エコ・口コミ重視」「プレミアム志向」「家電興味なし」「家電好き」を入力し、「登録」をクリック

この後はQuickCrossの「クロス表グラフ作成」機能を使って先ほど作成したクラスター分析アイテムを分析軸に、掃除機購入のきっかけを聞いた質問と掛け合わせて(=クロス集計して)、各クラスターの特徴を深堀していきます。(※ここではQuickCrossの手順を割愛)

下記のクロス表の色付けのマーキング箇所を確認すると、「前の掃除機が壊れたから」を選んだのは【家電興味なし】の人が51.6%と他のクラスターよりも多いこと、【家電好き】の人は「魅力的な新製品を知りそれが欲しかったから」という回答が10.5%で他のクラスターよりもやや多かったことなどから因子分析とクラスター分析で分析した結果に沿った内容となっていることがわかります。

クラスター1~4と他の質問を掛け合わせクロス表

以上のように、因子分析とクラスター分析を組み合わせて深く分析することで、ターゲットやペルソナ設定を行うといったマーケティングに有効活用できます。

また、多変量解析には、「コレスポンデンス分析」「因子分析、クラスター分析」の他にも、「PSM分析」「CSポートフォリオ分析」などもあります。このような分析を使いこなすことに、より深い考察やアウトプットの質の向上に繋げることができます。

QuickCrossの詳細な操作などは、下記の動画にてご覧いただけます。 【QuickCross活用講座(検定・多変量解析編)】クラスター分析

5.おわりに

これまで全5回の連載にお付き合いいただき誠にありがとうございました。
マクロミルの集計ソフトQuickCrossは、これらの分析を簡単にアウトプットできる集計ソフトです。マクロミルのリサーチ会員様限定でのご提供にはなってしまいますが、当コラムでご紹介した分析の基礎や集計のコツをデータ分析に活かしていただくことで、より良いマーケティング活動に繋げていただけます。もしご興味がございましたらお気軽にお問合せください。

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