中学生が大人にアンケート!3日間の職業体験でリサーチの仕事に触れる。
「リサーチで、世の中をもっと良くできる」。
こんな想いで社会貢献活動に取り組むマクロミルの「Goodmill」。ここで事務局を担当する横田が、マーケティングリサーチ会社が行う社会貢献活動について連載しています。今回は、港区立港南中学校の生徒さんたちによる職業体験の様子をお届けします。
1日目:ようこそ、マクロミルへ!
都内の多くの中学校では、職場体験・職業体験として公共施設や事業所などで実際の仕事を体験する学習活動を実施しています。マクロミルの品川本社がある東京都港区でも、区立の中学校で職業体験が行われており、今年は初めて近隣の中学校から生徒さんを受け入れました。
参加するのは、港区立港南中学校2年生の生徒5名。3日間かけてマクロミルの仕事を体験していただきます。
とは言っても、中学生を対象として仕事を紹介するのはこれが初めてのこと。大学生に向けて話す機会が多い人事のメンバーとも相談しながら、中学生が楽しみながらマクロミルの仕事に触れてもらえるよう、事前にプログラムを検討しました。
そして迎えた初日。まずは人事の担当者より、会社のこと、マクロミルの仕事のことを説明します。生徒さんたちはやや緊張した様子でしたが、熱心に耳を傾けてくれました。
続いて、2人がペアになってお互いにインタビューをしてもらいました。リサーチの仕事は「知ること」「理解すること」「伝えること」である、ということを実際に体験してもらうためです。
顔や名前は知っている相手でも、どんなことが得意で、何に興味があるのか、改めて聞くまで知らなかったことがたくさんあります。そして、インタビュー内容を資料にまとめて、ほかの人に紹介する「他己紹介」によって伝えることも練習しました。
2日目:アンケートの調査設計にチャレンジ
2日目の午前中は、リサーチの仕事を少し離れて、社会人として身に着けるべき基本を学びます。敬語の使い方や名刺交換のマナーなどを学ぶ姿は、さながら新卒入社の社会人のようです。中学生活では触れることのないビジネスマナーを知り、新鮮な驚きに満ちていました。
午後はいよいよ大きな課題を与えられます。「大人に聞いてみたいこと」をテーマに、マクロミル社員に対してアンケートを実施し、その結果をチームごとに発表してもらうというものです。
アンケートはセルフアンケートサービス「Questant」を使います。アンケート作成の手順を学んだあと、どんなことを聞きたいかをチームごとで話し合いました。その際も、学んだことをしっかり実践。自分たちなりの仮説をもって設問文や選択肢を用意しました。
そして、2日目の終了間際にアンケートが完成。これを実際にマクロミル社員に答えてもらうことになりました。はたして、どんな回答が集まるのでしょうか。
3日目:アンケート結果を社員に向けてプレゼン
2つのチームが作ったアンケートは、2日目の夕方に全社員に向けて案内されました。次の朝までに、どれくらいの数が集まるのか・・・。我々は、少なくとも数十人は協力してくれるだろうと思っていたのですが、ふたを開けてみれば一晩でなんと300人以上の回答が集まっていました!自由記述欄もびっしり。回答には、大人たちからの温かなメッセージが詰まっていました。
そこで、まずは全員で2チームのアンケート結果を見てみました。
聴取したのは、
・大人になってよかったこと、嫌だったこと
・中学生のときにやっておいてよかったこと
・中学生のときにしなくて損したこと
・役に立った教科
・勉強していた時間帯
・勉強方法・・・ などなど。
中学生が大人に聞きたいことが盛りだくさん。結果を見て、「もっとこれを聞いておけばよかった」「自由記述ではなく選択肢で答えてもらえばよかった」など反省の声も聞こえ、調査設計の難しさを実感したようです。
それでも、「例えば、男性と女性の回答で差があるかもしれないね」「自由記述で同じ回答がたくさんあった場合は、グループ化すればグラフにできるのでは」とのアドバイスを受け、限られた時間の中、役割分担をしながら結果をまとめていきました。
実は今回のアンケートの中で、とても気になる設問がありました。「自分が思う理想の大人になれましたか?」という問いかけです。私たちにとっては少しドキリとする質問ですが、これから大人になる中学生にとっては、純粋に気になることだったのでしょう。
しかし、この設問に対する選択肢は、「なれた」と「これからなる」の2つなのです。リサーチに携わる者にとって、このような設問は不完全に思えます。なぜなら、「なれた」に対しては「なれなかった」という選択肢がなければ網羅性がないからです。
そこで、この設問を考えたチームに、「どうしてこの選択肢にしたの?」と問いかけたところ、「だって、答える人がかわいそうじゃん」と。その言葉に、私はとても心打たれました。
誰もが理想の大人になりたいと願っている。でも、そんなに簡単なことではない。今はまだ「理想」の状態ではなかったとしても、「なれなかった」のではなく、「これからなる」可能性を残しているだけだ。理想の大人になれなかったと結論付けるには早すぎる。そう考えたのかもしれません。
彼らは「かわいそう」と答えましたが、そこにとても優しい気持ちが込められているようで、調査設計としての正しさで判断するのではなく、回答する相手のことを思いやった表現に、とても大切なことを教わったような気がしました。
アンケート回答に協力した社員からも、「あの設問はとてもよかった」「ほっこりするアンケートだった」「中学生の純粋さが伝わってきた」と、大きな反響がありました。日々、膨大な設問を生み出している私たちにとって、中学生の作ったアンケートに触れることは初心に帰ることのできる、大きな出来事となりました。
さて、いよいよプレゼンの時間になりました。
各チームが結果をグラフにし、気づいたことをまとめた資料を作成しました。数時間で作ったとは思えない内容で、中学生がここまでできるとはと驚きです。
プレゼンは50人以上のマクロミル社員がオンラインで参加。社員から質問を受けたり、フィードバックをもらったりしました。生徒さんたちも、自分たちの頑張りが伝わったのがうれしかった様子です。
職業体験を終えて
3日間のプログラムを終えて、生徒たちは「あー、終わったー」という解放感とともに、少し寂しさも見せていました。それだけリサーチの仕事の楽しさが伝わったのであれば、私たちもうれしく思います。
リサーチの仕事は「知ること」「理解すること」「伝えること」。そして、これらはリサーチの仕事でなくても、誰かとコミュニケーションする上でとても大切なことです。家族や友達、先生など、関わる人との中で、ときにぶつかり合うこともあるでしょう。そんなとき、相手を「知ること」「理解すること」「伝えること」の大切さを、少しでも思い出してもらえたらと願っています。
職業体験の受け入れを通じ、私たちも大切なことを学びました。なにより、とても楽しい3日間を過ごすことができました。貴重な機会をご提供くださった港区立港南中学校のみなさま、大変お世話になりました。どうもありがとうございました!
この記事を書いた人