FLEE

公開してすぐに観たのに、下書きのまま塩漬けにしてしまった😅

FLEE フリー」を観た。
ラスト、涙が溢れ出てきた。
主人公への哀れみなのか、強く生きようとしている主人公の想いなのか、主人公を守り、支えた家族なのか、ボク自身はなんて平和に暮らせているんだという感謝なのか…
以下、ネタバレありなので注意。

幼少期、すでに父親は、当局にムジャヒディンの嫌疑で拘束されて消息不明になっていた。
主人公のアミンは、姉の服を着て、ウォークマンで欧米の曲を聴きながら無邪気に外を走り回る普通の子供だった。
兄からは男らしくという感じで男の子の遊びを一緒にする一方で、ジャン=クロード・ヴァン・ダムに恋する。
国の状況は徐々に不穏になり、住んでいる地域も戦場になるという話があり、国外に避難せざるを得なくなる。
ビザを発給していた旧ソ連に母、兄、姉たちと向かう。
旧ソ連では、不当に扱われるため身を潜めて生活をせざるを得なかった。経済も崩壊していて物資もほとんどない状況だった。
なんとか旧ソ連から逃れるために違法出国を試みる。
姉2人はコンテナに詰め込まれてコンテナ船で運ばれて窒息死寸前だった。
その次はアミン、1人で出国することになる。密入国業者からは「家族はみんな死んだことにしろ。誰にも絶対本当のことは話すな。」と言われる。
そして、デンマークにたどり着き、移民として受け入れてもらえる。
聞き取りの時に、自分は男性に興味を持ってしまうので、それを治す薬はないかと相談する。
スウェーデンに住む長兄に会うことができた時、初めて自分は男性が好きなんだと打ち明けると、長兄はそれを受け入れてくれて初めてのゲイバーを経験させてくれた。
そして、今のパートナーと出会う。
ただ、パートナーにも本当のことは話していないのだという。
アミンの過去の数奇な運命、そしてパートナーに本当に自分がやりたいことを打ち明けていく、非常に個人的な物語だ。

主人公アミンは、ボクよりも10才くらい若いと思われる。今は、40を過ぎたくらいだろうか。
アフガニスタンに旧ソ連が侵攻したのは、1979年。
この頃にアミンの父親は、当局に拘束されて恐らく拷問の末に亡くなったのではないか。
ジュネーブ協定が結ばれて旧ソ連軍が撤退したのが1989年だそうだ。
この頃になると内戦が一層激化して、旧ソ連がビザを発給していたそうで、それを使って旧ソ連に避難したのだ。
旧ソ連での生活のシーンでは、マクドナルド1号店ができてちょっとしたお祭り騒ぎのシーンがある。1990年1月31日だそうだ。
その裏では、悪徳警官による移民への違法なゆすり・恐喝、そして女性への乱暴がされていた。公的権力を振り翳しての暴力…
そして、自らがゲイであるが祖国ではゆるされざる感情。自らの感情を押し殺して生きてきた。

この頃は、田舎の暮らしで決して裕福な家庭ではなかったが、両親、祖父母がいて、毎日家族で朝昼晩の食事を家族でとれて、ボクは何不自由なく学校で勉強し、放課後は友達と遊んだり、部活をしたりという時間が過ごせた。
マクドナルド1号店のシーンの頃は、成人して大学に通っていた頃だ。
主人公は、ある時父親が当局に拘束され、住んでいる地域も内戦に巻き込まれ、内戦から逃れてきたロシアでの不当な扱いと、密入国業者に翻弄されるという、とても想像できない人生だ。
主人公は、自分を守り逃がしてくれた家族に報いるためにも、ちゃんと人生を生きなければならないと思い、前に進んできた。
何と強い人だろうか。
そして、本当のことを明かすことは、家族の危険にもつながる状況である中で、この物語を語っている。

タイミング的には、ロシアがウクライナに侵攻して、生活する場を失った人たちが出ている。
そんな出来事と重なってくる。
なぜ、人は、人を思いやれなくなるのだろうか?
なぜ、悪いこととわかっていることを国の命令だからと実行できるのだろうか?逆に実行しないと自分の命が危ないからか。
なぜ、みんな同じ考え、思想にならないといけないのだろうか?人は、やはり異なるもの、理解できないものを排除したがるからだろうか?
ぼくは偉そうなことは言えない。
無意識に差別したり、理解できない人の話を聞かなかったりしてきている。

主人公は、平穏に生きているところを探し、受け入れてもらえた国で幸運にもそれが叶った。
自分らしく生きるとは?
自分の暮らす土地とは?
本当の自由や平等とは?
すごく、考えさせられる映画だった。
そして、ラストの感動は、ボク自身、まだ自分の感情なのによくわからない。
言えるのは、アミンを受け入れてくれるパートナーに巡り会え、そして幸せに生きている場所があってよかったと思った。
自分で人生をつかむための努力をしてきたのだなと思う。
本当にすごい人だ。

家族の一部は、アフガニスタンに戻られてるそうだ。
実名が出ると、家族に何があるかわからない。
そんな状況が今でも続いている。
安心して暮らせる世界になって欲しいと、心から願う。

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