第21話 シナリオ

大阪府、愛知県両警察のSAT(特殊部隊)を含めたチームは作戦開始から2時間余りで新自由連合の制圧に成功した、と政府は発表した。

特別チームの作戦は大阪府警主導で行われ、後方支援として治安維持軍は控えていたが実際にはなんの働きもしていない。そのことに関しては報道されることもなく、作戦が完遂したことのみが報道された。大きく時間は割かれることもなく。

「これで終わるとは思えない」


それは内川、坂本、前島議員3人の共通認識だった。



改革新党議員は今回の作戦における治安維持軍の功績を訴えかけ、正式に認めさせるための法案を提出。そして、影のフィクサーは軍閥の形成を目論んでいる。


政権内、与党内での法案反対派はごく僅かにすぎない。このままでは治安維持軍関連法案は成立してしまう。
前島の孤軍奮闘の甲斐もあってバラバラだった野党がようやくまとまりつつある。

しかし、他の野党には危機感が足りないのも前島は感じていた。


アサミとケイとは絶えず連絡を取ってはいるが、壊滅させられたヤツらのその後について聞こうとは思わなかった。聞くまでもないからだ。


また平穏な日常は続くのか?ヤツらの壊滅もフィクサーのシナリオだとしたら、この先一体なにを企んでいるというのだろう。



坂本の病状は一進一退を繰り返している。胃にできていた腫瘍は摘出されたが大腸に転移しているのも確認された。

家族も含め、このことはまだ誰も知らない。

抗癌剤と放射線治療は坂本の体力を奪ってゆく。


この春、坂本麻美は進学した。父の活動に関心を示し出していたが、母親を手伝って妹くるみの世話もしているので、まだ父の活動に加わることはなかった。

常に冷静に状況判断ができるという面では父親に似ている。

が、まだようやく高校生になったばかりだ。

9歳下の妹のくるみは年齢的にもやんちゃなところもあって、母親はやや手を焼いている。忙しい母親に代わって麻美が学校に呼び出されることも少なくはなかった。

くるみのそんな一面は現在もそのままだ。23歳の現在も。


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阪口 誠   Makoto Sakaguchi
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