蛍狩りのよる(ft.『Summerluck』)【Sandwiches #59】
週末、すっかり暑うござんすね。わたしのアパートには「窓用エアコン」なるけったいなマシーンしか付いておらず、やあ、これがなかなかに扱いに困る代物なのでした。ぜんぜん涼しくならんし、電気代は食うし、結局窓を網戸にして、扇風機を回してしのぐ最近でございます。とろけちゃうわね。
さらにはそろそろ梅雨入りらしいと聞いてむきゃあ! な心持ちでおりますが「楽曲紹介」シリーズ、今日はこれからの季節に合うとか合わんとか、な「Summerluck」(2ndアルバム『KINŌ』M9)をどうぞ。
この「Summerluck」は現在、各種音楽サービスで配信されているmaco maretsの楽曲のなかでもっとも再生されているトラックです。2018年11月リリースの2ndアルバム『KINŌ』に収録されていますが、初出は2017年の夏。「Hum!」に続くデジタルシングルとして配信リリースされました。
それと同じタイミングで公開されたミュージックビデオは、「Amazing Season」「Deadbody」「Click It, Freeze It」等でもご紹介したウエダマサキさんによるもの。氏の特徴とも言える静謐さをたたえた美しい映像のなかで、鳥や、船や、飛行機やさまざまなものものが「分身」していて面白い。
ついでにわたしの影もまるでバルタン星人みたいやん……と、これがあれね、わたし自身が主役っぽく映っている唯一のビデオで、みんなで海沿いまでドライブして撮影したのを覚えています。まさに3年前の今ごろだったから、時のすぎる速さには驚いてしまう。当時はとにかく撮られることがはずかしくてはずかしくて(今もやけど)、だって、浜の釣り人たちがじろじろ見てくるもんやから、そわそわこっそりダンスしたのですよ。
とかく、そんなちとお恥ずかしい映像をふくめてとても愛されることになったこの「Summerluck」という楽曲です。昨日のお便り返信コーナーでも「Summerluckに出会ってからmaco maretsさんの曲を聞くようになりました。」と書いてくださった方がおりましたが、まさしく代表曲的な扱いになっておる。他の曲とくらべて何倍もの再生数(!)で、なぜ、ここまで聴かれているのんか。わたし自身はようわかっておりません。なんででしょう。
わからんのだけど、ひとつmaco maretsとしてターニングポイントとなった曲であることは間違いなくって、それはこの「Summeluck」のプロデューサーでもあるアズマリキ氏のnote記事に少し触れられていた理由。
ボーカル録音をする。
今までと違う。
1st『Orang.Pendek』とだいぶ違う。
『Hum!』とも違う。
少し戸惑う。
声が、ものすごく、小さいのだ。そして今までよりもさらに柔らかい。
(No2 こちら側から見たマコマレッツ _ STUDIO75 覚書)
そう、いまではすっかり常套手段と化した、ぼそぼそ、ささやき声の歌唱スタイルはおそらくこの「Summerluck」を経て会得したものなのです。なぜそんな歌い方になったのか、それも今となっては思い出せぬが(わからんづくしでごめんなさい)、とにかくこのタイミングでなにやらつるり、一皮むけたわたしだった。
ただこの曲がうまれた2017年の前半というのは以前「Hum!」の紹介記事(すばらしサンドイッチ(ft.『Hum!』)【Sandwiches # 46】)でも書いたように「いろいろあった」時期ですから、その影響が大きいのかな、という風に思います。
歌詞に関しても少しだけ触れますと、ぜんたいを通して地元・福岡の川沿いの情景がイメージの根っこにありました。「空き缶みたいなこころを抱いて 歩く室見riverに音は流れる」なんてフレーズがありますが、ここで登場する「室見river」、もとい室見川(むろみがわ)は福岡県に実在する河川の名前です。椎名林檎氏の「正しい街」という曲の歌詞にも登場していて、すくなくとも福岡市民ならピンとくるのではなかろうか。
そんでこの室見川は実家の近くをも流れていたのだけど、そのエリアはとくにホタルが出るというので有名だったのです。毎年初夏のころには多くの見物客が車で乗りつけ、ぼう、ぼうと舞う明かりをおっては歓声をあげる、まさに風物詩でした。わたしもよく家族と連れ立って蛍狩りにでかけ、川沿いの道を散歩した。
ホタルのひかり自体はそんなに派手なものではないけれど、それがやっぱりすてきなもんであれ、たまにすぐ近くを飛んでいたりしてね、思わず手を伸ばすのだけどなかなかどうして、手のひらにはおさまってくれぬ。するり、ぺかぺかひかりながら飛んでいってしまうのね。そのときの、ちょっぴりのさみしさが「Summeluck」におけるひとなつの奇跡をのぞむこころに投射されておるような気がいたします。
一応の「代表曲」ゆえにところかまわず年中ライヴで歌い続けた結果か、今では季節感などどこかへ行ってしもうた。それでもね、サマーですから。この季節になるとより一層、思い出のなかの、ホタルを追うような感覚がよみがえってくるのでした。……なんてわたしってば、エモなんて一番苦手なあれだもんでね、ここらでおしまいにいたしましょうねえ。雷雨のよるに、maco maretsがお送りしました。
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本日はお便り返信コーナー、おやすみです。ごめんなさい(また明日以降にご紹介させていただきますね)。引き続き下記で募集しております。
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