【原稿】電験3種を活かした働き方

出版社より題記のコラム依頼があった。

「今の仕事に苦しんでいる人」に役立つ話を書くことができたと思う。

東芝の赤字に巻き込まれた経験を経て、ここ1年で何百冊という書籍を読み、経済を動かす層との関わりの中で、レベル上げたと思っている現時点の自分が書いたものである。

冒頭

テクニック論なものはもう書きたくなかったから、なかなか終わらせることができずにいた。こうなると、コンディションを落とす。

ここで思わぬ助け船があった。書籍「オームの歴史100年」である。

読んでいてよかった。ブレずにいけた。

電気主任の歴史

1900年頃、電気事故が多かったこともあり、電気主任技術者という制度が始まる。ただこの当時は、本当の優秀な人材が抜擢されていて、試験もなかった。

電気主任技術者は、設計、管理、教育、なんでもやったという記載が各所に残っている。(ここは大事であり、現在、失われつつある)

2022年

ここで、STATCOMなどを開発したりもしていない若輩者の自分が「電験3種を活かした働き方」を書くのは大変恐縮であるが、「電験3種を活かした働き方」の前に書きたいことがあった。

「仕事をすること」「働くこと」である。

これが一番大事。

「仕事をすること」「働くこと」

電験3種を活かした働き方というテーマの前に、まずは「仕事をすること」「働くこと」について、書きたいと思います。ここが最も大切だと考えているからです。整理できていれば、自分の中に軸が通り、入社試験でも上手くいく可能性が格段に高まるでしょう。
今の世の中には昔以上に沢山の仕事があり、様々な働き方ができるようになりました。技術進歩に伴い、多くのことが自動化されましたが、それでも社会人の多くは日常の大半を仕事に費やしています。仕事をする日々を幸せに捉えることができる人もいれば、そうでない人もいます。ここでは仕事がツラいという人に向けて、書きます。
自分は仕事が楽しい状態とツラい状態の両方を経験しました。今は電気技術者としての仕事、講師や執筆の仕事をする日々がとても幸せです。ここに至るまでには考え方の変化がありました。
私たちは沢山の仕事の中からいくつかを選択して、それらを含む事業を持つ企業に入社したいと考えます。仕事を選択する際には企業のネームバリューや規模、福利厚生などを一番の理由にしがちですが、ここに大きなミスがある可能性があります。
「あなたはどんな仕事をしている時に楽しく過ごせますか?」「あなたはどんな仕事が嫌ですか?」という問に対して、あなたなりの答えを書き出してみて下さい。電気の技術者として分かりやすい仕事としては施工作業、施工管理、修繕作業、修繕作業の管理、プラントの運転業務、設計業務、講師業務などがあります。仕事のタイプ別では、机上業務(書類作成、調整業務、予算業務)と現場作業に分けることができます。
自分に好きな仕事はないと感じる人もいると思いますが、人から感謝される事や自分の力で日々進捗できる事に対しては、少しは好きと感じるのではないでしょうか。自分の好きな仕事を中心とした仕事をしていけば、自ずと似たような人が集まり、幸せな生活を過ごすことができると感じています。今の仕事生活がツラいと考えている人は自分の得意な事、好きな事の比率が多い仕事にシフトするように動くと、良い方向に向かうはずです。転職だけが環境を変える手段ではありません。今勤めている会社での仕事を少しずつ変化させて、自分の好きの比率を上げていくと、新しい道が切り開けると思います。

「電験3種を活かした働き方」

電気主任技術者は歴史ある資格の一つです。1900年初頭、電気の安定供給、保安の確保を果たすために電気主任技術者の制度が導入されました。当時は現在のような試験ではなく、学識の高い者が選出され、日本の電気業界を牽引し、日本経済の発展に貢献してきました。電気設備の設計から運用、後継者の育成など幅広く仕事をしていたと言います。
私たちは高度経済成長期を経て、大きな技術進歩を経験しました。街中には沢山の電気設備が溢れています。さらに、近年ではメガソーラーや風力発電、電気自動車の充電スタンド等も建設されました。
そのような背景と人口減少が相まって、電験3種や電験2種の人材不足が予測され、電験3種は年に2回試験が行われることになりました。資格を有していないと行うことができない「独占業務」である以上、資格取得後に仕事に就くことは難しくないと思います。
しかしながら、前回のコラムで書いた通り、仕事はあなた自身がやりたいと思える仕事でなくてはいけません。ここがズレていると「この仕事もやらないといけないのか」「現場に行くのが面倒だな」となり、楽しさを感じるところではなくなってしまいます。
電験3種の仕事は非常に多岐に渡るため、企業によって、仕事内容が異なります。現場作業が多い仕事、現場作業よりも管理業務が多い仕事、電気だけでなく機械も含めた設計の仕事等々。あなたがどんな仕事を好むかが大事で、あなたが仕事を選ぶのです。
電験3種を取得することで、電気の基本知識が得られることは勿論のこと、調べる能力、情報を整理する能力、困難に立ち向かう精神力、学び続ける姿勢が身に付き、人によっては人間的な成長を遂げます。少なくとも、面接では企業の面接官は人間性を見ています。
最後に少しだけ自分の話をすると、有難いことに機会があり、社内で電気の教育部署を立ち上げる経験をしました。電気技術者を輩出し続けることで、機械修繕だけでなく、電気修繕もできる会社にできます。会社の経営に貢献できるのもありますが、社員の働き方に幅をもたすことが一番の狙いです。技能が身に付けば、私生活でも色々できるようになります。ここは実際に社員から御礼を言われました。社内に教育関連の仕事を作っていくというのもまた可能性としてあることをここで伝えたかったです。

「会社の求める人材と自分」について

 会社が必要としている人材というものを考えたことはあるでしょうか。現在勤めている会社で仕事をする上でも、転職活動をさせる上でも大切なことだと思います。会社組織はある程度、理想の人材というものを想定していると思います。
私は転職の相談を受けることもあるのですが、会社の求める人材について考えたことのある人とそうでない人には大きな開きがあるように感じます。面接の練習をすると、すぐに分かるのですが、会社が必要としない要素を強くアピールしまう人が意外にも多いです。
 失敗例を挙げますと、会社が補修管理をする人材を求めているのに対して、資格取得について熱く語ってしまうなどがあります。資格を取得していることは素晴らしいのですが、資格だけで仕事をすることはできません。管理の業種であれば、人と人とのコミュニケーションが大切であることが多いですから、資格だけで仕事が成立する場合を除き、資格は背中を支えてくれるものという認識程度で十分です。実際、面接官は保有資格を見て、頑張ってきた人材であることは認識しています。
 自分が経験してきた仕事を振り返る中で、会社が必要とする人材とマッチする部分はどこだろうかとすり合わせをするとよいでしょう。転職に限らず、現在の職場にて次のポジションを狙う際にも有効です。そのため、ルーティンワークをこなすだけでなく、目を惹く経験を積んでおくことが大切です。
目を惹く仕事というと、新しい仕事を思い浮かべがちですが、ルーティンワークを改善したり、上司が行っている仕事を一緒に行うだけでも、実は社会から見て価値であることが往々にしてあります。例を挙げると、以前、6600Vの大容量変圧器の点検をしている業者の作業管理を行っていたのですが、変圧器本体の点検はリーダーのみが行っていました。リーダーが必ず行わないといけないルールはなく、ただの作業分担でした。作業員は自分の作業が終わったら、それを眺めているだけ。ここで、変圧器の点検を経験すれば、転職活動においても、大きな財産になるわけです。
 価値があるから仕事をやるというのも良いのですが、技術者として成長するという心をもって仕事に臨めば、それが価値になっていく。それがのちに自分を助けてくれるものになったりするものです。

まとめ

大変、有難い機会を得ました。

人生の大半を占める仕事の時間。

この原稿からヒントを得て、幸せを感じて生きていける人が一人でも増えると幸いである。

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2019年2020年の経験を経て、新たな形のオンライン塾。勉強資料を格納している。既存の塾や通信講座や特別講座以上に「基礎知識」「失敗確率を極力減らす方法」が得られる。定期的に届く配信記事をきっかけに問題を解いたり読んだりことで知識のベースアップも狙う。塾や通信講座のメリットに加えて、難化する試験対策を考慮した戦略を共有するマガジン。最近はさらに発展し、資格取得後の先の話を開拓している。

国家資格「電気主任技術者試験(第3種・第2種)」に関する学習の場と書庫。参考書以上をより分かりやすく解説。また、自身が執筆する参考書原稿の…

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