カピタンの窓◆たびことば
歴史の教科書に載っていた扇型の人工島を、大人になってから訪れた。
街が変化した今、その場所は長崎県の市街地の真ん中になった。
鎖国時代、欧州との唯一の貿易地であったのが出島だ。
インターネットは勿論、外国語辞典すらない頃だった。
日本の若者たちは未知の文化と言語を学ぶため、僅かな情報を頼りに出島に滞在する外国人を訪ね夜通し教えを受けたという。
その熱意と努力が切り開いた国際交流の道筋は、今日まで繋がっている。
燃え立つ意欲を胸に抱いた、若人たち。
異国への憧れに弥立つ瞳は、どれほど明るく輝いていただろう。
オランダ商館長が暮らしたカピタン部屋は、唐紙の壁模様が瀟洒だ。
格子窓の外には、かつて海が広がっていた。
遥か遠い故郷を思い、窓辺に佇んでいたオランダ商館長。
そのさびしい瞳に、有明の海原がやさしく映えていたならばいい。
格子の隙間から遠くを見晴らすと、ビルの狭間に小さな海が見えた。
読んでくださり、本当に有難うございました。 あなたとの、この出会いを大切に思います。 これからも宜しくお願いします!