歳を重ねて良かったこと
あと数ヶ月で57歳になる。
残念ながら老後必要だと言われた2.000万円の貯蓄は無い。生きている間ずっと泳ぎ続けるしかないのだ。マグロみたいに。
自営業なので元気でさえいればまだ仕事は続けられる。若い子たちと一緒にいる時間が長くて気持ちだけは若い。
バレエ教室なので、3・4歳くらいから長ければ10年以上の年月を共に過ごしている子たちがたくさんいる。結婚して生まれた子供をまた通わせてくれたり。
それぞれの人生の中でバレエに夢中になった期間があって、そこに関われたことが幸せだと思う。
長いスパンで物事を見ることが出来るようになった。まずそれが歳を重ねて良かったと思う。
バレエは様式美である。バレエダンサーはバレエを踊るための身体を訓練によって作り上げ、技術を磨き、その身体と技術を使って物語や音楽、感情を表現する。
素晴らしい音楽、美しい衣裳、舞台装置、照明
その世界に憧れてバレエを始め夢中になり、頑張って頑張って、バレエがどんな芸術かを知れば知るほど、いつしかほとんどの子がこう思う
自分はなんて条件が悪いんだろう…と
ここで言う条件とは、持って生まれた身体的なもの…関節の柔らかさ、筋肉の質、手足の長さ、足の甲のしなやかさ、強さ、顔の大きさなどなど
努力してどうにかなる事とどうにもならない事がある。本当に人生は理不尽なことに満ちている。
私自身が若い頃ずっと思っていた。
バレエ以外にもっと向いてることがあったかも知れないと。
手足が短いことも顔が大きいことも
痩せたからといって理想的な形にならないことも
本人のせいでは無い。
日本人に生まれたことや女に生まれたことと同じように自分で選んだわけじゃない。
たまたまバレエという芸術には向いてないだけ。
だから私と同じ様に、自分がバレエに向いてないと思い悩んだり落ち込んだりしている子に必ず伝える
バレエに向いていない身体だったとしてもそれはあなたの人格とは全く関係ないことだと。
なぜ私はこんなに苦しんでいるのだろう
本当にバレエが好きなのか
バレエの何が好きなのか
続ける意味が有るのか…
悩んだ末に
稽古場から足が遠退き
バレエが無くたって生きて行けると意地を張る
だけど、また稽古場に戻って
バーにつかまって
プリエの音が始まると
やっぱりバレエに夢中になっていた自分に戻る
理屈じゃない、純粋にもう自分の人生の一部なんだと気づく
誰かに認めて貰うためでなく
バレエが好きだったら自信を持って踊ればいい。
歳を重ねて、人生には報われない努力があることを知り、出来ない人の気持ちが分かるようになり、カタチの美しさだけでは無い本質的なもので魅せられるようになる。
だから
歳を取るのも悪くない
年金納めるのもあと3年だし。
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