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お札の人 3

人生大成功コンサルタントの40代の男は
ソファに前に立つと、
「まずはあなた様の名刺を
ご拝受させていただきたいです」
マサル氏は変な日本語の
言い回しに気が障ったが、
「電子でもいいですか」
と聞いた。
「大変おそれいりますが、
私は紙の名刺しかうけとらない主義でして」
マサル氏は大きく深呼吸をしてから、
急に上がった血圧を落ち着かせた。
紙の名刺など最近は使っておらず、
それでも財布の中に何枚か紙の名刺を
入れておいたと思って、
机の引き出しから財布を取りだしてみたが、
そこに名刺はなかった。

「それから、本日の手付金ですが、、、」
香水がきつ過ぎるコンサルタント男が言った。
マサル氏は机の横に用意しておいたジムに
使っているヴィトンのバックを男に手渡した。
そこには一万円が百枚の束を百束入れてあった。
マサル氏のビジネスにおいて、
実際に現金を動かす事はまれであったが、
何かのためにと、数億円はマンションの
金庫に入れておいた。
ダンディで余裕を醸し出しすぎだろコンサル男は
バックの中から一束を取り出して、
妙な目つきをしてマサル氏を見返した。
「はて、これは何かのジョークですか?」
男はマサル氏に一束を手渡した。

マサル氏は束を受け取り、
「これが何か?」
「この束は百万円で、
バックには百束入っているかと思いますけど」
嘘くさいダンディコンサル男は
「よおく紙幣を御覧なってください」
マサル氏は紙幣を覗き込んだ。
そこにはいつもの一万円札があった、、、、、
ように見えたが、
その肖像画が何か違うように見えた。
はて、一万円札の肖像画って誰であったろうか。
野口さん?いや違う。新渡戸さん、、、、じゃなくて、福沢さんだよ。そう福沢さん、
いや待ても、この一万円札の福沢さん
何か違うなぁ、、、。
数千億も資産を有するマサル氏ではあったが、
日ごろ手にしない紙幣の一万円札の肖像が
どのような容姿であったのか
記憶があやふやであった。
しかしこの一万円札の肖像は
明らかに福沢さんではない、
そしてこの肖像はどこかで見たような気もする。
何か腑に落ちないマサル氏の様子を見ていた、
ダンディで気に障る40代のコンサル男がマサル氏の横に立っていた。
そして一万円札を指さした。

<またつづく> *ショートじゃなくてすみません、、、、、。