日本NPO学会で発表して感じたこと(前編)
先日、日本NPO学会で発表するまでの5つのステップを振り返るというnoteを書きました。振り返ってみると、思ったより長い時間をかけて準備したことを思い出しました。
やっと当日を迎えて、発表できたのは良かったのだけど、ポジティブな手応えは実はあんまりなくて。だからこそ得た気づきもありました。
そのことをレモネードラジオで話しました。一緒に参加した、理事で研究者の絵理さんにもお話を伺いました。
発表の内容は、私たちのMother's Dayキャンペーンを題材に、NPOの活動を継続するための、寄付集めについて、支援の対象とされている当事者(ここではシングルマザー)が、その寄付集めの活動に関わる効果を検証する、というものでした。
従来の寄付集めの文脈では、支援の対象とされている当事者というのは、「受益者」と呼ばれて、寄付によって実施される支援の受け手であり、そのファンドレイジング活動に関わる機会というのはまずないという背景があります。
当事者不在の問題を考えるときに、例えば、当事者の声をアンケートから集約して支援団体が「代弁」することはあるでしょう。「それで十分なんじゃないですか」という意見もあるかもしれません。
でも、それはあくまでも、当事者の姿の一部を切り取ったものであって、彼女らの本当の姿と言えるでしょうか?代弁される言葉は、寄付者へのお礼や、ひとり親の窮状を訴える話題に偏りがちです。
シングルマザーに日々 接している私たちは彼女らのいろんな側面を見ています。 タイヘンなこともいっぱいあるし、生活は決して楽ではないけれど、本当はね、喜びもあるし、ささやかな夢もある。(でもあんまり楽しそうな姿を見せちゃうと寄付が集まらないから、苦しい側面を強調する、という意識は働いていると思うんです)一部だけを切り取って 当事者の姿だと表現するというのはあまり 誠実ではない気がしています。
こうして、ひとり親のイメージを固定化し、支援者と被支援者の役割を固定化してしまうことは、人が、自分らしく自立していくことを妨げるという弊害もあると思うんです。
真の支援とは何か?が問われていると思っています。
そこで、シングルマザーズシスターフッドでは、こうしたイメージや役割が固定化されないように、支援を受けた人が、支援する側にもなれるという場を作ることに挑戦してきました。その一つが、シングルマザーが、エッセイを執筆して、発表して、セルフケア、エンパワメントといった支援への応援の寄付を呼びかけるというキャンペーンです。
私たちは、シングルマザーに対して、これを「表現による自己の回復プログラム」として確立させました。その効果の一つ「受益者から、担い手になるというパラダイムシフト」これが、今回の発表のテーマでした。
内容はこのスライドで紹介しています。
発表してみて、色々な反応がありましたが「こういうことができるのは困難度が低い当事者なのでは?」「エッセイに書かれたことの信憑性は?」「エッセイを書ける人はいいけど、書けない人についてはどうお考えですか」と言ったコメントがあり、あぁ〜これじゃディスカッションの入り口にも立てないなと思ったのでした。
こういうコメントに対して、まず言いたいのは、「決めつけないで」ということです。
シングルマザーズシスターフッドに集まるシングルマザーの困難度が低いということは決してないです。
配偶者からの暴力から親子で逃げて、身を隠して生活しているという人も一人や二人ではありません。子どもの不登校や、自身の病気など、さまざまな困難に直面していた時に、セルフケア講座に参加したことで前向きに生きる力を得た、という過程を踏んで、このキャンペーンに参加してくれています。
私たちは、エッセイを書ける人と、書けない人、というふうに、2つのカテゴリに分けて人をみていません。「書けない人」と支援者が決めつけてしまったら、その人の力を誰が信じるんでしょうか?
私たちの信念は、例え困難を抱えていてもどんな人にも力がある、その力を発揮する後押しをするのが私たちの活動で、そのためにあらゆる工夫をするというものです。
自己肯定感がもともと高いからやり遂げられるのではなく、こうした取り組みにチャレンジしたからこそ、根拠のある自信を身につけ、健康的な自尊心を育てていける。
そんな努力をした人に対する誤解に対して、ちゃんと説明ができるようにしたい。
学会のモデレーター新川達郎先生、討論者の秋吉恵先生からは、「決めつけ」についてを共感をいただきつつ、「もっともっとこのプロジェクトを進めていく上での工夫や仕掛けの意味を掘り下げて言語化できるはず」とアドバイスいただきました。
アカデミックの道には進まなかった私だけど、こういう現場あっての研究は大好き。これに懲りずに、実践しながら、研究していきたいと思います。
次回は、もうちょっと、よかった話もしたいと思います。
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