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ニューヨークは遠い|移動距離10,000km以上と1km未満(後編)
ニューヨーク、かなり遠いな。
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JFK空港着陸から入国までの行列3時間待ちがニューヨークへの長い距離感を増幅したのは明らかだが、その感情をさらに大きくするのには別の理由があった。
周囲を観察することくらいしかできなかった列の中、入国審査のブースが並ぶ真上にある巨大な壁に目が留まった。さまざまな言語の文字が無造作に描かれていたのだ。英語をはじめ幾つかの言語は見覚えがあったので、それが「ようこそ!」という意味であることは想像がついた。自然と日本語を探す。しかしすぐに見つかると思った母国語はどこにも見当たらなかった。
あまりにもたくさんの言語が描かれているので埋もれてしまっているのかもしれないと隅から隅まで何度も目を凝らして探してみた。後ろにも壁はあるのかなと振り返ってもみた。疲れと乾燥で目が霞んでいたため頻繁に瞬きもした。あることが前提なので最初は割と軽い気持ちで、だが徐々にまさかとは思うが、もしかしたら、と疑いを抱きはじめ真剣にいや必死に探していた。探し下手のため見逃していることもあるが、3時間並んでいる間にはみつからなかった。
かつて(就職したての頃)は海外に出るとあらゆる場所に日本企業の広告が目に入ったものだが最近はかなり少なくなったからね。列に並ぶ人から日本語が聞こえることも以前と比べると少なくなったような気がした。日本からニューヨークは遠くなってしまったのかな。
自分で結論に至り、納得して頷いた。それと同時に、列に並んでいる私に見えない日本語で「ニューヨークへようこそ!」と背中を押されたような気がした。
日本が消えてしまわないようにしたいなと心が望んだ。