mackyfuji

53歳で夫婦でニューヨーク移住。東京生まれ。 繋がることを心掛けて毎日を暮しています。

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最近の記事

ニューヨークの『君たちはどう生きるか』 | 少年と灰色サギか青サギか

邦画は日本語で観たい。 年末、タイムズスクエア近くにある映画館で日本のアニメーション映画を観た。話題作のTHE BOY AND THE HERONだ。 公開されるやいなや、全米興行収入で第一位という快挙。いち早く観に行くべきだったと後悔したその理由は、年末の映画館での上映は全て英語吹替になっていたのだ。宮崎監督の映画はキャラクターに合わせた独特な話ことばや声のトーンなどに魂が籠る。日本語ネイティブが日本語で観られないのは悲しい。 しかし、ここはニューヨークなのだ。アメリ

    • ニューヨークの座敷わらし | アンディ ウォーホルが現れる

      自らの叫び声にびっくりした。 背筋から脳天に向けてぞわぞわと寒気が走った。その叫びは、敢えて言うのであれば遊園地のお化け屋敷で後ろから突然驚かされた時にでる類の声と似ている。 声がよほど大きかったのだろう。隣のギャラリーから何事かと真剣な顔をした人が跳んできた。 ニューヨーク市のマンハッタン南西に位置するチェルシー。名高いアートギャラリーはもちろんのこと、ストリート沿いには大小のギャラリーが連なり、世界中から数多のアート作品、そして我こそはとアーティストが集結してくるア

      • ニューヨークに咲いた花|ミュゲ(すずらん)の香りと祖母とのお喋り

        ミュゲの香りね。 フランス製の香水の瓶を見つめながら祖母は言った。 すずらんの香りでしょ。 そう、だからミュゲね。 祖母は香りにうるさい。 いつもは上から2番目の引き出しに収まっている美しい香水のボトルを机の上に並べる時にはきまって祖母の話がはじまった。 祖母が若い頃と今とでは香水に使われていた呼び名が違う。わりと昔の方が原文に忠実な気がする。ゆえにフランス製の香水に使われているすずらんをミュゲとフランス語で口にしたのだろう。 東京は日本橋の百貨店に勤めていた祖母は舶来

        • ニューヨークの住まい|排水口を見つめながらアースデイを迎える

          キッチンのシンク、水が流れない。 数週間前から怪しい気配は感じていた。 水がシンクに溜まりながらゆっくりと流れていくようになり、ついに今日その流れがほぼ止まった。実際には数分かけて溜まった水は減っていくが流れているとはいえない。 何かが詰まっているのだろう。 シンクの真下にあるU字型のトラップなのか。 急いで近くの生活必需品を扱っているハードウェアショップへ向かう。キッチン用パイプクリーナーを購入して、さくっとクリーニングしてしまおう。 まずはシンクに溜まった水が排水

        ニューヨークの『君たちはどう生きるか』 | 少年と灰色サギか青サギか

        • ニューヨークの座敷わらし | アンディ ウォーホルが現れる

        • ニューヨークに咲いた花|ミュゲ(すずらん)の香りと祖母とのお喋り

        • ニューヨークの住まい|排水口を見つめながらアースデイを迎える

          ニューヨークの写真家|ネルソン マンデラの笑顔

          1本の電話があった。南アフリカ共和国のケープタウンへ飛び、ネルソン マンデラ元大統領の肖像写真を撮るという依頼だった。2000年のことだ。 撮影場所はマンデラ氏が18年も収監されていたロベン島の独房だ。 身に余る光栄なことは間違いない。あまりにも偉大な、おそらく史上最高の人道主義者であろう人と向き合う機会が与えられたことで、写真家リチャード コーマンの魂が引き締まった。 ケープタウンまで27時間のフライト。 前夜に警護隊から、マディバと共有できる時間は数分だと知らされてい

          ニューヨークの写真家|ネルソン マンデラの笑顔

          ニューヨークのヤンキースファン|私はオオタニのためにここにいる

          忘れることのできないニューヨーク ヤンキース ファンがいる。 彼は大谷翔平のために、初めてヤンキー スタジアムへ試合観戦にやってきた。 「ベーブ ルースを知っているかい。 彼の存在はヤンキースだけでなく全てのファンを釘付けにしたんだ。 オオタニも同じ。本物のスーパースターなのさ」 得意げに話してくれた。 2021年の6月。 ニューヨークで行われるエンジェルスの数少ない公式戦の観戦のためヤンキー スタジアムへ出かける日がやってきた。我らの住まいはニューヨークだが、この日ばか

          ニューヨークのヤンキースファン|私はオオタニのためにここにいる

          日曜日。 カーテンを開ける。コーヒーを飲む。市場に出かける。牛乳を買う。 いつもと違うのは朝から戦場のメリークリスマスを聴いていること。 晴れているけど、風の音が強いニューヨーク。

          日曜日。 カーテンを開ける。コーヒーを飲む。市場に出かける。牛乳を買う。 いつもと違うのは朝から戦場のメリークリスマスを聴いていること。 晴れているけど、風の音が強いニューヨーク。

          ニューヨークで本物を見る|自由の女神の背中

          自由の女神はアメリカの象徴のひとつである。 観光名所として人気があるが、機会があれば行ってみてもいいかなというくらいであった。なぜなら映像や写真がドラマチックすぎて実際に本物を目にしたときのギャップに悲しくなることもあるからだ。 自由の女神が立つリバティ島への上陸は予約も必要なので、それが少々面倒だという理由もある。 そこへ夏休みを利用して妹が息子2人を連れてニューヨークへやってきた。 「ニューヨークといえば自由の女神」 私と同世代の妹はかつて一世を風靡したテレビのク

          ニューヨークで本物を見る|自由の女神の背中

          ニューヨークの写真家|ジャン-ミシェル バスキアの肖像写真

          バスキアの顔が分からなかった。 彼の名前、作品、若くして亡くなったということは知っていた。 写真家リチャード コーマンのpopupでは、私が人生を歩んできた中で影響を受けた数多くの著名人と出会うことができる。 彼が肖像写真家であること、そしてニューヨークがアート、音楽、ミュージカル、ファッションなど多くの分野で活躍する表現者たちが集う街であることが理由なのかもしれない。 繰り返して言おう。 バスキアの顔が分からなかった。 正面に大きく飾られているにも関わらず、いくどか見て

          ニューヨークの写真家|ジャン-ミシェル バスキアの肖像写真

          ニューヨークの写真家|ブルックリン橋の下、ふっと現れたグランドピアノ

          ニューヨークの写真家、リチャード コーマン。 彼のpopupは常にチャレンジがある。 写真がテープで壁に無造作に貼り付けてあったと思えば、別の日には同じ写真が威厳を示すようフレームに収められ三脚に乗せられたり、床に置かれていたりする。飾る位置が上下違うだけでも新しい装いとなる。 大胆にも、数十年前のモノクロポートレイトに斬新でカラフルなコラージュが施されることもある。 これがめまぐるしく移り変わるニューヨークならではのアートシーンなのか! リチャードは撮影した写真家しか

          ニューヨークの写真家|ブルックリン橋の下、ふっと現れたグランドピアノ

          ニューヨークの食|ごひいきの「もやし」

          ニューヨークのもやしは、子供のころに食べたもやしと似ている。 日本では衛生的な個装パックがスーパーマーケットで売られるようになってからしばらく経つが、幼少の当時もやしは八百屋さんの店先に置かれたポリバケツ(クリーム色もしくは水色)の中で水につかっていた。ざるに一杯〇〇円、盛り方によってはずいぶん得した気分になったのを子供心にも覚えている。 ニューヨークのグロッサリー(食料雑貨店)ではトレイにパックされているもやし(薬味用かと思うほど少量のこともある)が野菜の棚に並んでいる

          ニューヨークの食|ごひいきの「もやし」

          ニューヨークの住まい|年中行事のデコレーションは地産地消

          どこに暮らしていても伝統的・文化的な季節の年中行事がある。 特に一年の後半には大きな行事が毎月のようにあり、年末が近づくと街では行事に合わせて飾るオーナメントを取り扱っているショップを頻繁に見かけるようになる。 感度の高い人が集まるニューヨークではショーウィンドウやインテリアショップなどの店内がセンス抜群にデコレーションされ、これさえあれば年末年始をお洒落に過ごせるだろうなと欲しくなる。 だけどいままで買ったことはない。 住まいはそれぞれにスタイルがある。お店でみつけた

          ニューヨークの住まい|年中行事のデコレーションは地産地消

          ニューヨークという街|憧れの写真家に出会える場所

          今まで無かったよな。 アムステルダム通りをいつもと変わらず足早に歩いていると、奥に細長く伸びる小さなギャラリーのようなスペースがあることに気がついた。ガラス越しに中の様子がうかがえたので立ち止まった。一目で誰かと分かる数々の肖像写真が室内すべての壁に無造作に貼り付けてあったのだ。 新しい額縁屋ができるのかな。 アートの街ニューヨークではお気に入りの絵画や写真を家に飾ることが一般的なので、作品に合わせてフレームを注文できるような額縁専門店が街中にたくさんある。部屋の奥に座

          ニューヨークという街|憧れの写真家に出会える場所

          ニューヨークの食|ソウルフードは和食

          半世紀以上も付き合っている胃袋に何を入れてあげれば毎日をフットワーク軽く、気分爽やかに過ごせるか。それは私にとっては紛れなく和食である。好き嫌いを超えたソウルフード(郷土料理)だ。   50代からの海外生活を健やかに送るために優先したいことは食である。どの世代にも必要かつ欲する食があるだろうが、50代ではじめる新たな環境での暮らしにおいてはその比重がこの上なく大きくなっており、正しい食を選択することが欠かせない。   先日、頻繁に海外を訪れる友人も話していた。海外滞在中はそ

          ニューヨークの食|ソウルフードは和食

          ニューヨークは遠い|移動距離10,000km以上と1km未満(後編)

          ニューヨーク、かなり遠いな。 JFK空港着陸から入国までの行列3時間待ちがニューヨークへの長い距離感を増幅したのは明らかだが、その感情をさらに大きくするのには別の理由があった。 周囲を観察することくらいしかできなかった列の中、入国審査のブースが並ぶ真上にある巨大な壁に目が留まった。さまざまな言語の文字が無造作に描かれていたのだ。英語をはじめ幾つかの言語は見覚えがあったので、それが「ようこそ!」という意味であることは想像がついた。自然と日本語を探す。しかしすぐに見つかると思

          ニューヨークは遠い|移動距離10,000km以上と1km未満(後編)

          ニューヨークは遠い|移動距離10,000km以上と1km未満(前編)

          2019年4月3日は人生のターニングポイントである。生まれ育った東京を離れアメリカ合衆国のニューヨークへと移り住む日となったからだ。 映像業界において日本よりもずっと先を行くアメリカ。特にニューヨークはビデオグラファーの夫にとってはとてつもなく面白い土地なのである。人生は短い、後悔はしたくない。大きな決断をした夫とともに、私も日本で培ってきた経験をニューヨークで繋げようと思いを定め、見知らぬ大海で路を見失わないようにとニューヨークへ向かう船の舵取り役として乗り込んだのであっ

          ニューヨークは遠い|移動距離10,000km以上と1km未満(前編)