見出し画像

ニューヨークで本物を見る|自由の女神の背中

自由の女神はアメリカの象徴のひとつである。

観光名所として人気があるが、機会があれば行ってみてもいいかなというくらいであった。なぜなら映像や写真がドラマチックすぎて実際に本物を目にしたときのギャップに悲しくなることもあるからだ。
自由の女神が立つリバティ島への上陸は予約も必要なので、それが少々面倒だという理由もある。

そこへ夏休みを利用して妹が息子2人を連れてニューヨークへやってきた。

「ニューヨークといえば自由の女神

私と同世代の妹はかつて一世を風靡したテレビのクイズ番組で使われていたテーマ音楽を口ずさみ行く気満々である。
日本からほぼ1日かけてやってきたニューヨーク。世界遺産でもあるし、行かない理由はひとつもなく訪れるべき最優先スポットに昇格した。

ならばあの王冠まで登らなきゃ。
老朽化によりいずれ入れなくなるという噂もあるし、既に1日限定人数しか上がれない。
さっそく予約サイトにアクセスしたが半年先くらいまでいっぱいで、妹と甥たちが滞在する限りある日程ではその下の台座までなら僅かに空いていたという状況であった。

当日は快晴。
自由の女神のお膝元でランチをとれるようベーグルサンドをリュックに入れ、マンハッタン島の南に位置するバッテリーパークまで地下鉄で向かう。そこからフェリーに乗っていざ出航。

青い空に白い雲。太陽の光が眩しく、海面がきらきらと輝く。彼方に見えていた自由の女神はフェリーが進む角度によって見えたり見えなかったりしながら近づいてくる。

フェリーから見える自由の女神

フェリーから続々と降りる集団とともに我ら一行もついにリバティ島へ上陸する。心なしか全ての人が我先へと女神像の立つ場所へまっしぐらに歩みを進めているように感じた。
あと少しで自由の女神とご対面なのだ。

後ろ姿だーーー!
我ら全員が同時にのけぞった。
初めて目にする自由の女神は頼りがいのありそうな大きくて厚い背中の持ち主で、慣れ親しんだ顔はまだ見えない。

最初に現れたのは後ろ姿だった

お互いに目を合わせ、思わぬ展開に笑みがこぼれる。
右にたいまつを掴み、左に独立宣言の日が刻まれた銘板を抱える手は想像していたよりも大きくてふっくらとしている。
自由の女神の背面からの立ち姿は、正面からみるそのものよりも自由へのエネルギーで満たされ、揺るぎのない自由への重みを知った。

次に下から見上げてみる。

自由の女神を真下から見上げる

王冠の突起、たいまつ、独立宣言書の3点セットがばっちりみえるため、全身はなくとも自由の女神であるということは明らかだ。

向かって左横から眺める。

捻りの利いた自由の女神

右足を後ろに下げており、少し捻りのあるなめらかなボディラインは優雅さと上品さを醸し出している。正面からでは気づかなかったが、たいまつを掲げている腕にものすごい勢いがある。

そう、これこそが本物。
実物が目の前にあるから自分だけの自由な発想で感じ取ることができる。
真の自由の女神を知ることができるのだ。

自由の女神から臨む街並み
左からジャージーシティ、マンハッタン、ブルックリン
自由の女神から見える風景を堪能し
台座から降りる足取りも軽くなる

甥からの後日談。
新学期、英語の授業で自由の女神がテーマになった。
「アメリカにある自由の女神はどの国が贈ったのでしょうか」
次々に答えた生徒たちに正解はなかった。

「フランスです」
たいてい授業では静かにしている甥が珍しく手を挙げた。
自由の女神からのギフトだね。最高だ!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?