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「例外〜小説よりも映画だった」

原作の小説よりも映画になった時の方が感動した作品がある。

私は、元々小説を読むのが好きなので、映像化される時に落胆することがある。漫画にも言えることだが、原作越えは基本的に難しいと考えている。

何故なら、どうしても無理が生じるからだ。原作に愛着があるひとにとって、少しの変更でもあれば、それは違うものになってしまう。原作を逸脱することが許せないのかもしれない。

好きな作品は幾つもあるが、やはり読むことができる量には限界がある。直感で読みたい、と感じたものから読んでいくので、興味があるのに未読であることは、特段珍しいことでもない。

そこで起こってしまったのが、しばらく前の話になるが、原作が未読の作品の映画化されたものを、読むよりも先に観てしまったことだ。

上映期間を考えたら、見逃すのも嫌なので、急いで読むよりも映像化作品を優先した。

見終わった感想をひとことで言うと、感動した。限られた時間内に収めるための無理は多少あったが、夢中になり集中して観ることができた。そして鑑賞後は清々しい気持ちになれた。

勿論、役者も優れていた。脚本や製作も上手だったのであろう。
涙を流す感動というよりは、良い作品だという思いがストレートに心に響いた。

伏線にも納得がいった。わざとらしくなく、最後に納得させてくれたのだ。

「これは良い、これは凄い」と、声に出して言っていた。思わず口からこぼれたのだ。

早速、原作を探して読んでみた。
私が好きな作品を幾つも書いている作家だったので、俄然張り切って読み始めた。

確かに脚色してある。映画は原作そのものではない。
ただ私にとっては、意外なことに原作は映画を超えなかった。

この出来事は自分にとって極めて珍しいといえる。長いこと私は、小説でも漫画でも原作が第一とし、全て原作に沿って作られるべきという強い信念があった。過去に幾つかの例外があったとしても、最近では起こらなかった。

考えてみると、最初の印象が強いインパクトを与えるのか。先に知った方が正義になってしまうのか。

映像化しか知らない作品の原作は、物足りなさを生んでしまう可能性がある。映像はそれだけ強い印象を残すはずだ。
ただ、それでもほとんどのものは、私の中では原作が勝ってきた。だから今回のことは、久しぶりに起こった出来事だった。

良作だと思ったその作品、原作者は納得しているのだろうか。おそらく納得済みではないのかと考えてしまうくらいに、私にとっては好きな映画作品になった。

これもまた良い。そう思う。
思い込みで正義を語りたくはないのだから。

#エッセイ部門
#創作大賞2024


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