警察とマフィアに絡まれた話(中編)
自分たちを追ってきていた青い光はこの国の警察だった。パトカーが2台、もの凄いスピードで自分たちの車を追ってきていた。パッシング(ライトの点滅)を何度もされ、終いには並走されて「今すぐ止まれ!」と言われた。自分たちの興奮状態はピークまで達していた。ただでさえ国境のセキュリティから逃げて興奮しているのに、次は警察が現れた。興奮と緊張と恐怖と、さまざまな感情で押しつぶされそうだった。
私たちは一度、指示に従って車を路肩に停めた。だが「このまま停まったらあいつらの思う壺だ!いま絶対に逃げたほうがいい!」と本能的に思い、パトカーが止まったタイミングで再始動し、パトカーをまくべく猛スピードで走って逃げた。そして自分はというと、どうしてか分からないが、レディーガガの “Born This Way”を助手席で流していた。爆音で流れる”Born This Way”の前奏20秒くらいから流れる「ズンダダズンダダズンダダズンダダ」というイカついリズムによって自分たちの脳みそからは脳汁(アドレナリン)が溢れ出し、興奮状態をピークを超え、もはやドラマや映画の世界へとトリップしそう(飛びそう)になっていた。
しかし私たちは結局、パトカーに囲まれてしまい、逃げたことに対してめちゃくちゃに怒られ、国境へと連行された。(自分たちも自分たちがしていないこと、連行が不当なこと、ハボロネで処理したいことなど全て伝えたが何も意味はなかった。) そして事故現場へと連れて行かれ、当時あった場所に車を停めて簡単な再現や検証、目撃者がいたか、車にどこが傷付いているかなど全てを確認した。私たちは、車の傷の付き方がおかしいこと、スペアタイヤが付いているためベンツのエンブレムより先にナンバープレートが壊れるのはおかしいこと、もともと間に他の車が停まっていたこと、衝突の感触は全く感じなかったこと、衝突を目撃したと主張するセキュリティがある程度時間が経ってから来たのがおかしいということ、など自分たちの主張を全て主張した。しかし、悉く全ての主張は無視され、自分たちに過失があると言われた。
一番自分が衝撃を受けたことは証拠に関してだ。自分は「国境なのだから防犯カメラがあるだろう、その映像を見れば自分たちがぶつかっていないということが証明出来る」と主張した。しかし警察は「目撃者がいる、目撃者の証言が全てだ」と主張した。再度、「目撃者の証言だけでは今回の事故の過失は証明出来ない。カメラの映像が全てを証明出来る」と主張したが、「その必要はない。映像は提供しない」と相手は繰り返すだけだった。私は続けて、「Which is more accurate (correct) between humans’ eyes and the recording of security camera? What do you think? (人間の目と防犯カメラの映像、どっちがより正確か?正しいか?どう思う?」と警察に聞いた。すると警察は「人間(目撃者)の目だ」と言った。終いには「カメラに映像なら編集できるだろ」とまで言い放った。(そんなことを言ったら目撃者の証言だって賄賂でどうにでもできるだろ、、第一どうやって自分たちが国境のカメラ映像を編集するんだ、、)
もう言葉が無かった。この国では、この警察官たちには論理が通じないのだとその時に痛感した。そしてそのまま警察署へ行き、事故当時に運転をしていた友人が尋問を受け、その日は移動を許されず、3人で車の中で夜を過ごした。そして次の日が来る。