人感センサーの謎
よく、玄関の前を横切ると、センサーで灯りが点くおうちってありますよね?おそらくは防犯対策のセンサーかと思うのですが、調べてみたら、
「人感センサー」というわりと低額で買える仕組みでした。
人感センサーには、ライトを点灯させるだけでなく、同時にチャイムとして家の中に知らせる機能が付いているものもあるようです。5000円くらいで買えるんですね。
もっとも防犯だけが役割ではなく、夜、自分の家に帰って来たときに、玄関灯が自動で点灯することで、つまづくことを防止したり、鍵を開けるのに便利だったり、そういう役割もあります。あと、消し忘れにも役立ちます。もしかしたら、消し忘れ防止が一番実用的で役立っているのかもしれませんねー。
そういえば、我が家の玄関(家の中)の廊下も、人感センサーで照明が点灯していました。試しに測ってみたら点灯している時間はちょうど10秒。その間に人間が少しでも動いていれば点灯は継続されます。気配が無くなった時点から数えて10秒間で消灯します。なのでそこに人間が居たとしても、動きが止まってしまうとその時点から10秒で照明が消える仕組みです。
なるほど、知らぬ間に自分の家でも使ってのか...。
お手頃のものだと、電球自体にセンサーが組み込まれていて、1000円~2000円くらいで買えるようです。点灯する時間はやセンサーが発動する範囲は値段や用途によってまちまちですね。
そんな人感センサーですが、異常な発動をさせているお宅が近所にあることを知りました。
普通の人感センサーは、1回点いたら1分くらい点灯していて自動的に消えます。ところが、近所の道路に面したおうちの玄関は、その前を横切ったときに点灯するだけでなく、一旦センサーが反応すると、何回も何回も点滅を繰り返すのです。
失礼ながらちょっと測らせてもらったんですが、センサーが反応すると、4秒点灯したあと、一旦消えて、また4秒点灯というのを何度も何度も繰り返します。
犬の散歩中なので、立ち止まってスマホを眺めていたとしても不審に思われていないと思いますが、数えてみたら点滅をなんと15回も繰り返しました。クルマが通過しても発動するので、計測中に何度もリセットされてしまい、正確な数値を得るのにかなり苦労しました。
人通りも決して少なくないところなので、常にリセットと発動を何度も繰り返し、それはもう一晩で数えきれないくらい点滅を繰り返していることと思います。深夜であろうと容赦なく発動します。
なぜそんなセンサー設定にしているのだろうか?どうしてもその好奇心を抑えきれずに、突撃インタビューをしてみました。
「ごめんくださ~い!」
「何か御用ですか?」
「いえ、大したことではないのですが、お宅の玄関の人感センサーライトが、4秒おきに15回連続で点滅を繰り返しているので、どうしてそのような設定をされているのか気になりまして...」
「4秒?測ったんですか?」
「はい。」
「15回連続というのも、数えたんですか?」
「はい、」
「暇なんですか?」
「ええ、まあ。というか好奇心旺盛なもので、気になって仕方なくなって、この場が生まれました。」
「勝手ですね。」
「すみません。」
「では、その勇気に免じて、人感センサーの設置と設定理由を教えます。」
「ありがとうございます。」
「実は私は大学で心理学を教えていまして、現在、クレームが発生するときの心理について研究しています。」
「えっ?クレームの研究?」
「驚きましたか?」
「いえ、驚いたというより、そんな研究している人がいるのかと思って、ますます興味が湧きました。」
「すぐそばに点滅信号がありますよね?」
「はい、あります。昼も点滅していますが、夜になるとチカチカが目立ちます。」
「そうです。それです。あれと同じことをやってみたくて。」
「なるほど。しかし、それとクレームの研究とどう繋がるんですか?」
「あっちの点滅について、あなたはどう思いますか?」
「特に気になりませんが...」
「こっちの点滅はどうですか?」
「気になります。なのでわざわざ質問しに来ました。」
「平たく言うと、クレームに来たということですよね?」
「いえいえ、違います。クレームではありません。どちらかというと、興味本位です。最初に説明したとおり、好奇心が抑え切れなくて来ちゃいました。」
「おかしいと思ったから来たんですよね?」
「ええ、まあ。失礼ながら、普通じゃないなと思いまして。」
「でも、クレームを言いに来たわけじゃない?」
「はい。謎を知りたくて。背景に何かミステリーが潜んでいるのではないかと。」
「ミステリーなんかあるわけないじゃないですか。」
「まあ、そうですね。でも、なんかミステリーに発展しそうな気もしてます。」
「あの信号みたいに、私の家の玄関口で同じように灯りを点滅させたら、誰かからクレームが来る気がして、そしてどんなクレームを言われるのか?興味があったので、やってみました。」
「へえ~、面白そうな実験ですね。」
「でも、普通に玄関を点滅させたら、変人じゃないですか?」
「ですね。薄々そう感じて来ましたので。」
「なので、人感センサーを大義名分としてカムフラージュして実行してみました。」
「なるほど。」
「これでクレームを言ってくる人って、どういう感情の持ち主だろうかと。そういう実験です。」
「で、誰か来たんですか?」
「たった今、来ました。」
「もしかして、私のことですか?」
「はい。そうです。」
「ちょっと待ってください。私はクレームで来たわけではなく、なぜこんな設定をしているのかを知りたくて、好奇心で来ただけですけど...」
「ですね。これはクレームを研究していてわかったことですが、そんな風に一見クレームっぽくない言い方をする人ほど、心の闇が深くて、クレーム心を持っていることが研究成果でわかっています。」
「え...と、じゃあ、私はあなたがの研究テーマのクレーム実験にまんまと引っ掛かったクレーマーということですか?」
「はい、そうです。始めてから67日と12時間26分で初のクレームです。思ったより時間がかかりましたが。」
「う~ん、なんか納得いかないな~。クレームで来たんじゃないんだけど...。」
「クレーマーほど、そう言います。」
「わかりました。では百歩譲って、私はお宅の玄関の点滅人感センサーに対して、クレームに来たとするじゃないですか。だとすると、このあとその点滅はどうするつもりなんですか?そっちの興味が湧いてきました。」
「もちろん止めます。実験は本日で終了しましたので、これ以上続ける必要はありません。そして、あなたは被験者としてたくさんご協力を頂いたので、報奨金を用意しています。」
「報奨金?」
「はい、失礼でなければ受け取って頂きたいです。」
「そんなもの、もらうわけにはいけませんよ。それこそクレーマーのゴネ得じゃないですか。」
「そうですか、もったいないですね。そんなちっぽけなプライドなんて捨ててもらっちゃえば良いのに。」
「失礼な言い方ですね。」
「3万円ですよ。経費としては少額ですが、個人でもらうにはまあまあの金額です。本当に要らないんですか?」
「要りません。」
「やっぱりクレーマーは頑固だな~。」
「う~ん... 気分悪いので、帰らせてもらいます。」
「そうですか、さようなら。」
「失礼します。」
というわけでひょんな出来事から、私の心の奥底には、クレーマー体質の闇があることが実験によって立証された...ようです。
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