物書きの音。vol.8「夜空を見上げたような清々しさの。」
物書きの音。
2020年の1月に書いたものです。
Googleドキュメントに眠っていたものを、投稿してみます。
(冬の時期に、雪が積もるなか、長野の戸隠神社に行き、奥社まで歩いたところから、浮かびました。)
「夜空を見上げたような清々しさの。」
ざくざく。ざくざく。
ただただ雪の中を進む。
どこに向かっているかはわかっていない。
この先にどんな景色が見えるのかも。
木々がダンスしているように見えた。
雪の衣装をまとって。
なんて楽しそうなんだろう!と思った。
私は歩きだしていた。
たくさんの木々の中を、雪をまとったダンスのトンネルを。
目指したい場所があった。
行きたい場所があった。
だからここまで来た。
どこかで道を間違えたのか。
どんどん雪深くなって、どこに進んでいるのかもわからない。
でも引き返す、という選択肢はなかった。
誰と約束したわけでもないのに、でも、ここで引き返してはいけないと思った。
ざくざくざくざく。
気がついたら、開けた場所に出た。
歩き始めたところよりも、雪は柔らかく、キラキラしている。
ここまで歩きながら、いろんなことが浮かんできた。
いいことばかりではない。
解決もしていない。
でも、一旦全部置いていける気がした。
真っ白な雪に、委ねてみたいと思った。
ふと浮かんだのは、夜空を見上げたような清々しさ。
夜空のなかでキラキラ光る星に、願いを込めるような。
冷たい空気を吸い込んで、シャキッとする感じ。
でも今はまだ外は明るい。
まだ歩ける。
歩いて戻ろう。いつもの日々へ。
晴天のなかで見つける、夜空を見上げたような清々しさは、私の背中を押してくれた。