Do you miss me!
目の前にドカリ
と
座る 白人男
身の丈は 天を衝くような
180センチ…いやいや 立てば190センチは優にあろう
青色のスーツ 高そうな
真っ赤なネクタイ パワータイ
そっくり返る
日本の 東京の地下鉄の中
何してんだい トランプさん
ホワット・アー・ユー・ドゥーイング?
僕は そう目で訴えた
トランプさん
にやり
と
笑顔で
ドゥー・ユー・ミス・ミー!
確信持った はっきり
と
ゆっくりとした英語
中学1年でもわかる 発音!
エクセレント!
などとは言わず
僕は 彼の斜向かいに座る男に視線を向けた
赤黒い肌をした男 20代後半か
ネイティブ・アメリカンじゃない
明らかに日本人
赤黒い顔の皮膚は 毛羽だったよな鱗状
スマホいじりながらそれを時折
パラリ パラパラ
と
鱗が落ちていく
ジーパンのももの上に
雪のように落ち 降り積もる
アトピー野郎の グルーミング 見てられない
その男が座る座席のはじっこに
女がひとり
もう暑くなったというのに
生成りのスウェットパーカのジッパーを首元まで上げて
袖口を折り返して着ている
それが ひどく汚れている
額がうっすら黒い ほこりでもついて きたない
大きな黒色のナイロンバッグを左肩に 黒いくたびれたデイパックを前に
ぼんやり 座る
案外若いか 四十路に入ったかどうか
ずっと地下鉄内を 行ったり来たり
1日をどう過ごそうか
と
すり減ったゴム底のスニーカー いつまでもつのか
左手の 珠数のようなパワーストーンブレスレット きれいな光沢を放つ
駅に着いた
若い
といっても三十路過ぎ
ひとりの女
ドアが開くと同時に 小走りで
車内奥のシルバーシートに 腰を下ろした
スミッコ席を占有 その顔は
「私は とくに どこでもよいです」
と
謙遜ぶったメッセージを湛えながら
きっと 老婆が目の前に来ても 立つことはない
60の僕から見れば
40代も 30代も どいつもこいつも
若くてピチピチだ
トランプさんは違うけど
ペコポコポン ペコポコポン
グーグルカレンダーのアラーム
会議が10分後に迫ったと知らせる
目が 見えて
彼ら 彼女らの存在が分かり
耳が 聞こえて
リマインド! 次の会議!!
それがわかるんだから
だから
だから
生きてるって
すばらしい