「弁当忘れても」
雨 降るんですか
と
老女が傘を差しだした
僕は厚い雲が覆う空を見上げた
手にした傘はきっちりと巻かれ袋に入った
折りたたみ
手元(ハンドル)は木に塗装したもの
昔風の折りたたみ
雨降るんですか
と
老女
空は1時間2時間はもつかもしれない
僕の目にはそう映る
きょうの帰りが何時間後かはわからない
天気予報は聞いていない
僕は折りたたみを手にしたまま
雨降るんですか
と
声に出して老女を見た
やせ衰えた骨が浮く背中だけを残し
老女は視界から消えた
雨降るんですか
もう一度声に出した
厚い雲に変わりはなかった
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