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「まごころの授受」

ブッブッブッブッ ブブブブブー
ぼくはチューバを吹いていた
1975年秋 中学の文化祭
ステージに上級生の女子生徒が
セーラー服の制服のまま 上がった
歌った マイクを握って歌った

ももえちゃんの歌だ

「あーなーたーに おんなぁのこぉのぉー」

ウケる ウケタた 大ウケだ

女子生徒もスポットライトを浴びて笑みを見せた
講堂に体育座りする
1年から3年までの生徒も 大コーフンだ

客席から白いものが飛んできた
コン

チューバのベルに当たって転がった
トイレットペーパー
大拍手 大喝采
女子生徒は舞台を降りた

翌日 ブラスバンドの練習に
顧問の音楽教諭が
頭を搔きながらやってきた
「絞られて しぼられて
 怒られて おこられて
 あんな歌を生徒にうたわせてって――」

部員たちは大笑い
声を上げて笑った

インタビューで
Q.女の子の一番大切なものって?
聞かれた ももえちゃんは
「まごころです」
と応じたそうだ

あの顧問が
「どうして まごころの授受が
 問題になるんですか」

反論した――とは聞かない

そんな時代もあったっけ

※還暦子+2さんのエッセー「山口百恵のまごころ」にインスパイアされました


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