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■「文春砲」王者の証明?!

マスコミってナニ?(15)
ニュースの存在を考える 「マスコミへの道」改

◇全紙が後追いした事件

東京メトロの駅の多機能トイレで、警報システムの不備が原因で、トイレ内で倒れた利用者の発見が大幅に遅れ、その後死亡していた―このニュースは
週刊文春の特ダネである。発売日の3月3日の前日、2日に文春オンラインで速報したのを受けて東京メトロが事実関係を報道発表し、翌3日には新聞各紙、NHKなどほとんどのマスコミが「後追い」した。
東京の地下鉄の中心的事業者であり、公共性の高い企業の東京メトロがしでかしたミス。厳しい目が向けられて当然の話である。
2日にネットでこの記事を読んだが、翌3日の朝刊各紙は、「また文春にやられた…」感ありありで、厳しく東京メトロを批判するより、しぶしぶ後追いをしているような記事が並んだ。当然、鼻高高の週刊文春は、ハデに「スクープ!!」と報じているのか、と思ったら…。
3日の週刊文春の新聞広告の中に当該記事は載っていなかった
だから僕は、「紙の週刊文春への掲載が間に合わず、ネットのオンラインのほうだけにスクープを掲載したのか…」と思った。ところが、その後週刊文春をチェックして驚いた。
当該記事は「THIS WEEK」という、政治経済、社会、スポーツその他のニュース何本かをを4ページにわたって短く伝える、本来なら社会に衝撃を与えるような独自ネタを載せるような場ではないページに載っていたのだ。
週刊文春の目次にも小さな文字で紹介されているだけで、新聞広告では載せないレベルの扱いだったのである。

少なくとも2つのことが考えられる。
1)スクープ、独自ネタとはいえ、内容が地味だった。扱いはこの程度でいい、との余裕っぷり。スクープ界の王者の証明か
2)広告その他の関係で、社会的意義のあるネタではあっても東京メトロとの関係を悪くしたくない、との配慮が働いて扱いを小さくした

想像でしかないが、僕は後者のほうではないか、と思う。
文春というのは民間企業たる文藝春秋社が発行する商業雑誌である。記事によって雑誌が売れる、売れない、ネット上で読まれる、読まれない…。そして、広告が入る、入らない…といった事情が記事掲載の扱いの判断材料になるとは当然だろう。
スポンサー、広告など気にしなくてよいようなNHKでも昔は電波行政の総元締めの郵政省に気をつかい、正月の年賀状配達セレモニーはじめ、郵政絡みのネタは大きめに扱ってきた。電波行政が総務省に移管しても郵政絡みのネタは大きくやるというのは変わらない。

今回のようなネタ、昔なら朝日や読売など新聞へのタレコミが先だったと思う。今はどんなネタでも、「まず文春に知らせよう。そのほうが社会的注目も集まる」と判断する人が多くなったのだろう。
新聞、テレビなどの記者クラブの下で行動を起こすのが先で、自分たちでネタをとる、ネタが入ってくる…という循環が少なくなったマスコミの体たらくは何とも情けない。
この東京メトロのネタの提供者も、こんなに文春の扱いが小さかったことをどう感じているだろうか。週刊新潮もそういう視点で文春の独自ネタを混ぜ返すくらいのゲリラ的手法で、鼻をあかしてほしい。

※写真はNHK
2021年2月19日の「■われわれはマス「ゴミ」ではない!」から60本にわたって書き綴った、マスコミ界歴35年の筆者が、改めてマスコミ(新聞、出版、放送)界と社会、世界について書き綴る。マスコミ志望者必読。

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