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「カツオは思う」

カツオは
やればできる 子

両親も姉も
カツオ自身も
そう 思っていた。

できる 子
というのは 専ら学校の「勉強」についてである
カツオはかけっこや草野球など体を動かすこと いたずらは得意だが
勉強のほうはさっぱり である。

やればできる 子

やらない
から
できない 子

思われた。

ただ
やらない のは
期待する結果が出ない
その可能性への怖れから である。

手を挙げない 自ら一歩を踏み出さない
言われたことを 最低最小限に
やっておきます
やります
はい やりました――

それでいい
最低最小限でいい。

組織の中のひとり
回るギアのひとつ
でしかない
それでよろしい。

遅れず 休まず
ひっそり

ギアのひとつ
として
回っているように しておればよい。

小さなギアは
大きなギアにはさまれ
否が応でも 否応なしに
クルクルクルクル
高速回転させられるだろう。

それでよい。

回されていればよい。

手を挙げず 口をつぐんで
最低最小限のことを やっておれば
時間だけは たってくれる。

やればできる 子
やったら できていたかも

老年になった
カツオは 思うのだ。

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