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【しごと詩】「帰る」
きのうやっと仕事が終わった ガラガラとトランクを引きずり 大みそかの朝 駅に向かう女がいる
彼女の顔には
「実家に帰る 故郷へ帰るのだ」
と 書いてある
これからゆくのは 上野か東京か それとも羽田か― まずは最寄りの地下鉄駅へ
と 彼女は急ぐ
休みがきょうからだとして 30日まで働いたのなら 4日土曜には仕事が始まる―
そんなところに 彼女は働いているのだろう
少しでも早く 東京を離れ 故郷に少しでも長くいたい
体を こころを休めたい
そうなのだ そうなのだ
故郷は そういう場所なのだ
電車が 飛行機が 定刻通り動き 彼女が無事に帰れますように
朝ランニングする ぼくはそう思いながら
すれ違う彼女のことを思った