■それなりに「共感」できる詩集
「詩集」を読んで (13) 不定期刊
◇雨をよぶ灯台
マーサ・ナカムラ著、2020年6月 思潮社刊
僕が「現代詩」に関心を持ち始めた2020年秋。その年9月に萩原朔太郎賞を最年少で受賞した、と評判となり、新聞記事を読んだ記憶があるのがこの女性詩人である。僕は前橋に以前勤務していたことがあり、朔太郎賞を主催する萩原朔太郎記念前橋文学館にも行ったことがあったが、そこで朔太郎の詩に触れたものの、ほとんど感慨もなかった。
マーサ・ナカムラと聞き、「日系人の詩人か…」と思ったほどで、現代詩詩人がそういう名前を付けたがる、という知識もほんの2年ほど前の僕は知らなかった。
その後、詩誌「現代詩手帖」を1年以上買い(最近は買わなくなった。理由は言うまでもない)、この詩人の作品もチラチラ読みはしたが、まとまった形では、今回この詩集で初めて読んだ。
全体で15編、30分もあれば読めるソフトカバーの本が2200円である。もちろん買わずに、図書館で借りて読んだ。
結論から言うと、彼女がおそらく夢でも見たことを、言葉、文字にしているような世界―が全体に広がる。
現代詩らしい、独りよがりの世界観はあるものの、僕には彼女が、(仮に彼女の夢の世界をベースとしていたとして)描く世界が頭の中に像を結び、何事かを感じることはできた。
その点では、僕とは決して相性の悪い「現代詩」詩人という気はせず、自分には理解できる詩を書く人だと思った。
amazonの書評で、★を一つしかつけていない人のレビューを見ると「これってなんじゃ。たぶん現代詩集なのだろうが、どこを探しても『詩心』ちゅうもんが全然ない。現代という時代、あるいは現代という時代を生きている自分に向かって、新しい歌をうたおうという気持ち、あるいは内的必然性!なんぞはさらさらなく、どこかのメデイアから頼まれたから既に功なり名を遂げたおらっちがなんかさらあら書いてやろうじゃないの、という程度の、志と体温の低い詩のような文章がゴロゴロ転がっているだけ」(大意)との訴えにも一理ある。
多くの、詩集になったり、評価される現代詩はそのとおりだと思う。
それでも僕には、まだマーサ・ナカムラの感性は理解、共感できた。
◇あの覆面女性詩人についても一言
一方、マーサよりやや年長の人気(?)女性詩人の最果タヒ。
先週5月29日の読売新聞の読書欄で、谷川俊太郎と対比される形(新旧の話題詩人)で取り上げられていた。
最果の何が、「嫌い」かというと、覆面作家であることだ。
顔出しせずに、作品を発表し、マスコミ対応をしていることである。
まあ、スキにしたらいいのだけれど、ペンネームはともかくとして、自分の顔ぐらいはさらして、作品を発表すべきだ、と思う。
顔を出さない表現者といえば、漫画家の中には一定数いるが、彼ら彼女らはそれでも自作の似顔絵くらいは出す。
マーサの話から、最果に飛んでしまったが、ホントに最果タヒは売れてる詩人なのか? 売れてるっていっても1万と2万もあるかないか――というレベルと思うけれど。
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