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「沫」
電車内 10人の9人がスマホとにらめっこの朝
覆うのは顔の半分 なのにマスクは全身を隠しているよう
座席に着き スマホ世界に没入
そこは わが家と同じ おうち時間
僕は 女と女のスペースに
発車間際に身を滑り込ませ
ごめんなさいよ
と
広げた本は
荒川洋治著「詩とことば」
言葉 ことば コトバ
百万巻の書を
読んできたよ
との
大先生
日々是学習の
思いに浸る瞬間
ひくしょんんっ
と
右隣の、安藤なつライク
肉体的 圧 熱量を発する
女が くしゃみ
僕の右手に 一瞬風が触れた
今の時代
やめてくれぇ~
の思い
マスクさえ あれば
くしゃみも そのままOK
OKとか ありえないでしょ 勘弁してよ
マスクのスキマから
飛んできますって シブキも
僕の右手甲は
しっかり
なつさんの 風を受けてますって
勘弁 カンベン かんべんしてよ
こんなことなら
立ってたほうがマシ
朝の通勤電車