「詩人宣言XXXV」
画題「私の人生」――
その画を 意思を伴って描きだしたのはいつからだ
意思というものの存在を意識する前――すなわち60年余り前 この世に生まれ落ちた瞬間から
私は「私の人生」という画を描き続けている
60年という年月に
まがりなりにも
画という形を残してきたとして…
描き続けてきたのは それが自分の存在証明でもあるから
その画は――
きれいだとか
暗いけれど味があるとか…よりも
色彩に富まないメリハリのない
絵具をベタリと塗りたくったのに過ぎない―― そう言われてしまう画
きっとそう きっとそうだろう
私の画などは
その程度のものでしかない
誰かが金を出して買うどころか
タダでも引き取ってもらえそうもない
それが
「私の人生」という 未完の画
私はそこに 点景として
画の中のアクセントにでもしてやろう
と
詩を 描き始めた
詩は文字として書かれるものだが
「私の人生」という画の中で
どう描かれるのか――
実を結ぶことなどない気もする
詩を書き
それを 点景として描く その詩を
「私の人生」の中に描き入れる
今はそれを 続ける 続けるのだ
画像=「1982年 私」鴨居玲