「術後雑感」
病室でストレッチャーに乗せられ
手術室に移動する
天井 照明 真上に見える その情景
テレビドラマでしか見ない景色 次々と目に入る
手術前にはパンツも脱がされ 若い女性看護師に囲まれ 介助されながら 下半身をさらし
麻酔を打つため 背中を丸めて裸の尻を突き出した 無防備に
若い女性の体に触れてしまうが
幸い下半身は ピクリとも反応せず
執刀医の整形外科医長が入ってきて ぼくは彼女らに体を拘束されるうち 意識が消えた
どのくらい時間がたったか 2時間 3時間
目覚めたら元の病室
上半身は腕も手も指も動く
だが 手術を受けた右ひざはもちろん 右脚だけでなく左脚を含めて下半身全体に その感覚がない 存在すら感じない
すべてが消えてしまった――
手で触れた太ももにも何も感じない
本当にそこにぼくの肉があるのか
下半身がなくなった――
まるで爆弾の直撃を受け 肉体が千切れたよう
これが あの感覚なのか
いや 触っても脚の存在を感じず 布団をはぐって見ればよいが 下半身がもしなかったら…その勇気が出てこない
なくなっていたら 正視できないだろう
ぼくは再び目をつぶり 考えた
脚はある きっとある 両脚とも
麻酔医や 執刀医が 脊髄を損傷させ神経が死んだ 医療過誤だ…
と 思った
そのうち 再び意識が遠のき
しばらくして目覚めると
ようやく脚に血が通う感覚が戻るのを感じた
夕方になって両脚とも動き出し
ようやく ほっとした術後の夜