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「失せもの」

どこで さよならしたんだろ
さっきまで この両手を包んでいた
右と左と 左と右の 手袋たち
バッグに押し込んだつもりが
どこを探しても見つからず
たった今のいままで 身に着けて
両手を温めていたはずなのに

ぼくの手を離れて消えた 毛糸の手袋
1000円もしないようなものならまだしも
妻がくれた 何千円かはするものだ
何年かの冬 この両手を温めてくれた

手のひらの部分がビニールレザーで切り替えられ
しっかりした造りだった
それなりに愛着のあったもの

その手袋が瞬時に消えた

何年も使った手ずれしたものなど
地面に転がれば 落し物扱いもされまい

ぼくには思い入れのあるものも
他人にはただのごみ

拾われて ぼくが探しにでも行くというのだろうか
そんなものはもう燃やしちまってくれ

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