「水の流れ」
川面に 私のこころが映る
河口から8キロ
川幅150メートルほど
上に架かる橋の上から
繁華な川下 と うら寂しい川上に目をやる
水は いつも濁っており
流れる音など まったくない
川岸はすべてコンクリートで固まり
川らしい姿は
ずっと上流でないと うかがえない
これが東京の川だ
大小の石が 川砂の上に
ごろごろと転がり
水の流れる音が はっきりと
聞き取れた
群馬前橋の 利根川
朔太郎も散策した
大きな利根川の流れとは
まったく異なる
川面をずっと見ていると
カワウやアオサギどもが
羽ばたき 飛ぶ
相変わらず 何の音もしない
かすかに
首都高を走る車のエンジン音が聞こえるか
濁った川面を ずっと じっと
見つめていても
水の中から 何か飛び出すこともない
ひたすら
ゆるゆる ゆるゆると
水が流れる
ああ 大きな魚影が見える
60年ほど前 ひどく汚れた川が
利根の水を流入させ きれいにし
魚が戻り 鳥も増えたと聞く
川の真ん中にあれほど大きな魚影…
いや レジ袋だった よく見れば
それが ゆっくり流れてゆく
この川をさかのぼり
いくつか交差する水の流れをたどれば
きっと あの利根の水面に たどり着く
濁った 波も立たない水面が
あの荒々しい 利根川につながる