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「羽ばたき」


いや、もう日は高く 昼に近い

プープー ポララ
プープー ポララ

プープー ポララ
プープー ポララ

窓の外で 鳩が鳴く

鳩は どこで鳴く
なぜ このマンション9階の窓辺で
鳴いている

ああ
鳩というのは元来、崖下を住処にし
現代のマンションが
彼らにとって 本来の住処に見える…らしい

プープー ポララ
プープー ポララ

鳴き声に 意味はあるのか
雄が雌を
雌が雄を

どちらかが どちらかを
恋い慕う
呼ばう 声なのか

プープー ポララ
プープー ポララ

僕はベッドの上に横になったまま
ぼんやりとした意識の中で
彼ら、彼女らが発する
恋の歌声に 耳をすます

あ…鳴き声が 止んだ

キシキシキシキシ
バッ バッ バッ バッ

鳩なのか
恋い慕う声を上げていたのと
同じ 鳥どもなのか

マンションが――
鳩どもの 昔むかしの
元来の住処、崖の上から飛び立つように
その高さは適当なものであるのか
そこから飛び立つ
何羽の 鳩だろうか
1羽2羽ではなく、何羽もの鳩が
その翼の 根元の筋肉を総動員し
全力でばたつかせ
骨と肉が、油が切れた機械のように
きしむ音を立て
キシキシキシキシ

飛び立つ――

ベッドの上に 寝転んだままの僕の耳に
その音が届く

バッバッ バッバッ バッバッ バッバッ


羽音
そこから巻き起こる風は
開けた窓の
レースのカーテンを透かし 届く

少し汗をかいた
もうベッドから起き上がる
時刻

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