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人生初ライブに行った話

私には、いわゆる「推し」というものがいない。
正確には、3次元の推しがいないというのが正しいだろうか。

2次元の推しはポケモンのヤドンである。現在1,000匹を超える数多くのポケモンの中でもありがたいことにそれなりにフォーカスされているポケモンなので、日々グッズを集めたり、ヤドン垢で発信したり、コラボイベント目的で香川旅行に行ったりと、熱を持って推している。


実在する人間の推しもいないわけではないが、芸能人で言うとマツコ・デラックスに阿佐ヶ谷姉妹にオードリー、YouTuberで言うと東海オンエアの虫眼鏡とQuizKnockのふくらPというところだろうか。
考え方や発言が好きなので出演していると追って見ることはあるが、「存在が毎日の活力になる」というような現代の推し像には及ばないかなぁ、という感覚である。

というような調子で、そもそも幼少期からテレビに触れることが少なかったからか芸能人への理解やイケメンへの興味も浅く、趣味の音楽といってもクラシックや吹奏楽、もしくはボカロやアニソンを聴くという偏った方向で育ってきたため、「好きなアーティスト/アイドル」というものができることもなく、ライブにも行く機会もなく四半世紀ほど生きてきた。


8月某日、私はKアリーナ横浜の会場にいた。
とあるアイドルのライブが行われるが、事情によりチケットが余ってしまったそうで、そのチケットを布教も兼ねて譲るので一緒に行かないかと職場の同僚に誘われたのだ。
正直わたしは名前を知っている程度のアイドルだったので一瞬悩んだが、こんな機会でもないと人生でライブに行くことはないかもしれない、また昨年できたばかりのKアリーナ横浜に無料で入れるというのは少し気になったので、折角なら行ってみるかと決心した。

ヘッダー画像を見れば分かる人は分かるのかもしれないが(あまりにもド新規すぎるので古参に刺されるのが怖いため)、グループの詳細は伏せておこう。


とても素敵な時間だった。メンバーの顔と名前、代表的な楽曲を昨晩駆け込みで履修した私には申し訳ないぐらいの良い席で、表情豊かに様々な曲を歌い踊るメンバーたち、振り返るとホールの天井席まで埋め尽くされた色とりどりのペンライト、光と音が交錯し、ファンの黄色い声やコールでどんどん熱を帯びていく会場が次第に一体化していくような感覚になり、3時間あったというプログラムはあっという間にアンコールを迎えてしまった。

斜に構えるというほどではないが、正直今まで推しは2次元でいれば十分だよなぁと思っていた。
引退や不倫などのスキャンダルが起きる心配がなく安心して推すことができるのが良いところだし、まったりのんびりしたヤドンというキャラクター性からか、ヤドン界隈の皆様もまったり愛でているような方が多いので界隈内でのインターネットバトルなども殆ど見かけたことがない。

しかし実在の人間を推すことの一番のデカさは「生きている」ということだなと思った。生きているのである。そこに実在しているのである。生のエネルギーをもって、今本人が発した声や動き、考えや質感をナマモノとして同じ空間で感じ取ることができるのである。

昨今の推し活の盛り上がりは凄まじく、推しにかける熱量や金額は年々高まりを見せている。時には「推すこと」自体が大きくなりすぎてしまい、人間の宗教観と絡めて語られることがあるほどだ。
しかし、たとえ推しから見えないような距離であろうとも、たとえレスポンスがもらえなかったとしても、ネイルやヘアメイクをばっちり準備したり、何本ものペンライトを振って自分の「好き」を表すことで自分の推しがより輝くよう応援するその気持ち自体が、とても素敵なことだなと思った。


今回のライブで、このメンバー面白そうだなという人はいたものの一目で恋に落ちるような推しは特にできなかったが、ステージ上の熱量、客席の熱量、上から下まで空間のすべてがキラキラと光り輝いていた素敵な景色は、きっとこれからも忘れない気がする。

私はおそらく他の人よりも良くも悪くも感受性が高い。なぜなら「ライブに行った」という出来事だけでガーッと2,000字ぐらい文章を綴ることができるぐらい、何かしらのインプットがあるとアウトプットがしたくなってしまう性分だからだ。
色々と感情が揺れ動きすぎてしまうとそれで疲れてしまう節があるが、それも私を構成する養分となることも事実なので、これからも色んな体験に足を踏み入れて、色んな気持ちを感じれたらいいなと思う。

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