「NPO法人志津南環境美化ボランティアの会」 KON-KON! おじゃまします(7)
まちスポ大津スタッフが今聞きたい人にインタビューをする“とびだす!KON-KONおじゃまします”!2022年度から開始した活動の、取材先第7号を掲載します。
増加し続ける放置空き家。衛生・景観・治安の悪化や不動産価値の下落など地域に与える影響が大きいものの、法律により国や自治体も簡単には手出しができず、ましてや住民間では隣家のことに介入しにくいことから、非常に難しい社会問題になっています。今回は、住民有志で空き家の草刈り剪定グループを組織し大きな成果を上げている地域があると聞き、草津市若草のNPO「志津南環境美化ボランティアの会」の舟木要一代表と大橋稔事務局長にお話を伺いました。(以下、敬称略)
2023年2月14日にお話を伺いました。
活動のはじまりと団体のなりたち
まちスポ:団体の紹介をお願いします。
舟木:若草岡本西地区の全域で環境美化の活動を行っています。公園・緑道等パブリックスペースを清掃する「緑化グループ」、高齢者宅のお庭の手入れをサポートする「高齢者支援グループ」、空き家の庭の手入れをサポートする「空き家対策グループ」、公園花壇の整備をする「花グループ」の4つに担当が分かれており、常に活動しているメンバーは50名。スポット参加のボランティアを含めると年間に延べ1,000名近くの方々が活動に参加してくれています。
まちスポ:どのようなきっかけで活動を始めたのですか?
舟木:開発の当初から年2回の町内一斉清掃があったものの、草木の成長が早く整備が追いついておらず年々環境が劣化していき、開発から20年を過ぎた頃には様々な不具合が生じるようになっていました。その後、町内一斉清掃の回数は年4回に増やすなどして対応しましたがそれでも充分ではなく、補完するためにボランティアで清掃をするようになったのが活動の始まりです。
まちスポ:2013年にはボランティアの会として正式に団体を発足されています。
舟木:環境を維持管理していくのは並大抵のことではなく、体制を拡大し組織化する必要がありました。また、シニア層の一部有志だけの活動に留めず、若い方を含めできるだけ多くの住民に何らか携わってもらいたい思いがあり、NPOとして法人化し、広く参加者や賛同者を募ることにしたのです。
活動前に起こっていた問題
まちスポ:環境の劣化によりどのような問題が起こっていたのですか?
舟木:公園では生垣の手入れ不足で中の様子が見通せなくなり防犯面が不安視されていました。小学校の通学路ではお子さんが歩道にたまった落ち葉をよけて車道に飛び出し車と接触する事故が起こりました。伯母川では落ち葉が詰まって増水を引き起こし、その増水を防ぐためにある調整池では伸び放題の草花が大規模な花粉被害を生み、また不法投棄の温床にもなっていました。事例は枚挙にいとまがありません。
放置空き家への対処もスタート!
まちスポ:放置空き家の問題もそうした事例の一つですね。
舟木:はい。各地で同じような旧新興住宅地がゴーストタウン化する現象が増えていて、住民の世代交代や放置空き家の問題に強い関心と危機感がありました。それで、思い切って空き家の草刈り剪定を始めたのです。
まちスポ:空き家の所有者とはトラブルになりませんか?
舟木:相続物件に関しては新しい所有者と面識がないことも多く、初回は自治会や民生委員を通して連絡をとるようにしています。立ち入りを拒否されることはまずありません。そして2回目以降は所有者から直接相談があるなど関係性ができてきますので、やりとりに不便を感じることは殆どありませんね。
まちスポ:作業にはどのような苦労がありますか?
舟木:草刈りの作業は真夏に行うことも多く、暑さが大敵となります。そのため、まとまった人数を投入して出来るだけ早く作業を終える必要があるのですが、これまでの経験から、統率がとれて効率良く動ける人数は15人までとの考えがあり、都度「15人組」を編成して作業するようにしています。
大橋:メール連絡網の「マチコミ」を使って当日作業できる人を募集すると割とスムーズに集まります。
活動の効果
まちスポ:活動の成果を教えてください。
舟木:これまでに草刈り剪定を行った空き家は54軒にのぼります。メンテナンスが行き届いていることで売買や賃貸がスムーズになり、今では空き家は半減しました。住民人口や周辺不動産価値も維持できており、その感謝として地場の不動産会社からは機材の無償提供、団地内の銀行や郵便局からは職員のボランティア参加などの協力をいただいています。
また、行政とは作業面や費用面を分担(例として、年4回の調整池清掃作業のうち同会が3回、草津市が1回をそれぞれ負担)する協定書を取り交しており、地元の小学校からは芋ほり体験や魚とり体験の依頼があるなど、活動を
通じて賛同・協力・交流の輪は着実にひろがっています。
雑草の花壇を「芝桜」に
まちスポ:いま特に力を入れていることや課題がありましたら教えてください。
大橋:もともと雑草が生い茂っていた場所に、あるとき「花を植えてみよう」となり、5年前から芝桜という桜によく似たピンク色の花を植える「芝桜プロジェクト」を始めました。この活動は平和堂財団からの資金助成(夏原グラント助成金)や多くの地域住民の作業協力を得ており、力を入れている活動です。
苗植えには地元小学校も参画していて地域と子どもたちをつなぐ貴重な交流の場になっています。
今心配なまちの課題は
舟木:課題としては災害時の備えでしょうか。一昨年の大雨の際、若草にも避難勧告が出ましたが、そのとき情報がうまく伝達されず混乱が起きました。また、それをきっかけに若草にも地盤が弱く崩落の恐れのある場所が存在することが公になり、防災計画自体を見直す必要が出てきました。
それから、これは長年の懸案ですが、通学路を歩いている小学生に中学生の通学自転車が衝突するケースが後を絶ちません。法律で自転車は車道を走ることになっていますが自転車専用の通行スペースが確保できておらず、車道が整備されないかぎり解決できない問題と考えています。
団体の今後について
まちスポ:最後に、団体の将来についてどのようにお考えでしょうか?
舟木:団体設立から今年で10年目を迎え、私を含め初期メンバーが70代の後半の年齢となりました。やはり後継者づくりが喫緊の課題であり現在は中心的な役割のバトンタッチを進めている最中です。ただ、もっと先の世代交代については心配していません。今は仕事や子育てに忙しい現役世代もボランティア参加を通じてこの活動の意義を感じているはずで、きっと、まちづくりの思いを引き継いでいってくれると信じています。
取材を終えて
取材中「机上だけで物事を考えてはいけない」と何度も口にされていたのが心に残っています。今回は掲載しきれませんでしたが、他にも野良猫のエサやり問題や路上駐車問題、ゴミ問題、ルール看板問題など本当に沢山の地域課題に取り組んだ経験をお持ちで、途中から私たちの質問が止まらなくなり取材時間は2時間を優に超え、まだまだお話を聞きたくなる偉大な先輩方でした。
2023年2月14日にお話を伺いました。
※写真提供 NPO法人志津南環境美化の会
👉KEYWORD!「草津市若草地区について」
1983年、びわこ文化公園都市計画地の一角に開発された旧新興住宅地。宅地よりも緑地が多くなるように公園や街路樹、花壇などがふんだんに施され、宅地にも緑化率の規定がある美観地区。しかし、一方でそうした環境を維持していくためには、多大なメンテナンスの負担がかかる地域といえます。
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