【特集】創作意欲は360度!工場で働く「モノづくり女子」と楽しく繋がりたい | 栄進鈑金製作所 後藤ともか
町プロタウンのBiz.会員のみなさんにお話をお伺いして、事業活動を通して実現したい想いにスポットライトをあてていく特集記事をお届けします。
今回舞台に登場していただいたのは、山形県米沢市にある株式会社栄進鈑金製作所に勤める後藤さんです。
板金製作は、鉄やステンレス材を切って、曲げて、溶接し造形するお仕事です。栄進鈑金製作所では、新たな試みとしてデザイン性を取り入れた製品開発に取り組んでいます。
「アイデアが浮かんだら作らずにはいられない!」とモノづくりに励む後藤さんの、「好き」に溢れた物語の扉を開いてみましょう。
プロフィール
後藤ともか | 株式会社栄進鈑金製作所
製造業に従事し、ノートPCの組立・解析・修理や、複合加工機を使用したプログラムから加工まで幅広く手を動かしてきたほか、農業ではスイカ・キャベツ・アスパラなどの畑づくりから出荷まで行ってきた経験を持つ。2023年10月に栄進鈑金製作所入社後、2024年4月から企画・営業を担当し、お客様と製品開発しながら現場での作業も楽しむ。夢は栄進鈑金製作所のマルチプレイヤーになること。
▶仲良し姉妹のママ
▶好きなこと:模写(キャラ)・音楽鑑賞(オールジャンル)・レザークラフト・山菜採り・掃除
コーポレートサイト:https://eishin-bankin.co.jp/
社内ベンチャー「eBラボ」:https://eb-laser.com/
鈑金製作所に生まれた、ワクワクを実現する発明所
「焚き火台を作れないかな」
山形県南部・米沢市にある栄進鈑金製作所は、建物の電機や空調関係に付随する制御盤や分電盤、配電盤の筐体(きょうたい:機器の外側を成す箱)の製作を手掛ける会社だ。板金加工から塗装まで自社ですべての工程を完結できることと、同業他社では得意としない大型筐体を製作・量産することに長けている。
そこに突然飛び込んできたのが、冒頭の依頼。地元の飲食店からの相談を受けて、折り畳み式のロケットストーブを設計、初めての共同開発を行った。
そこから筐体製作の技術を生かし「個人のお客さまにも求められる製品をもっと開発しよう」という取り組みが始まった。山形県の秋の風物詩・芋煮会用の焚き火台、味噌味の羊肉を焼肉にした米沢のソウルフード「義経焼」のための焚き火台、QRコードプレートなど、デザイン性を取り入れた製品が生み出された。
2024年1月には、相談を受けながら商品開発に取り組む新規事業グループをベースとして社内ベンチャーを立ち上げ、eBラボと名付けた。同社の強みを活かし、更に作り手とお客さまがワクワクするような製品はどんなものか、従業員がアイデアを出し合って作る発明所だ。
栄進鈑金製作所の間山社長からeBラボの運営を任され、企画営業を中心に始動を始めたのが金子さんと後藤さんだ。従業員には「好きにアイデアを出して作りたいものを作っていいよ」と言いつつも、営業担当の二人には、自社の技術を魅せる製品や、eBラボの活動を広められるような製品を作るという使命がある。後藤さんが上司の金子さんから「なにか考えてみて!」とお達しを受けて考案したのが「Milkな小物入れ」と「私の工具箱」だ。
「Milkな小物入れ」は、牛乳パックの細部まで板金で表現。折り紙のような構造になっていて、「え?これが鉄板でできているの?」と疑ってしまう。
「私の工具箱」は、工具箱を開けばレーザーでデザインを抜いた可愛いイラストのプレートが出てくる。「仕事で使う道具に会社の名前やイニシャル、好きなデザインを入れておしゃれにカスタマイズできれば、現場で頑張る女子のテンションが少しでもあがるのではないかな」と後藤さんが考え、「『モノづくり女子』としてシリーズ展開したい!」という想いから生まれた第一号。
町工場で働く女子の気持ちを高められるコンセプトを作りたい、という気持ちから、後藤さんは自らを「モノづくり女子」と名づけて、2024年5月からXで発信をし始めた。
幼少期から尽きない創作意欲
「小さい頃から、とにかくモノを作るのが好きなんです」
という後藤さんが栄進鈑金製作所に入社したのは2023年10月。それまでは切削加工の工場旋盤マシニング系の機械をいじったり、農業の現場で作物を作ったりといった、モノづくりの現場で働いてきた。
幼少期から創作意欲が旺盛で、幼稚園の頃には想像した物語や思いついたことをひたすら絵に描いていたという。小学生になると、裁縫上手な母親や祖母の影響を受けて手芸をしたり、絵が得意な母親と一緒に遊んだり。母親がキッチンで料理をしている時に広告チラシの裏紙に調味料や家にある置物を模写して「これどう?」って見せては、「ここはこうしたほうがいいんじゃない」とアドバイスをもらっていたそうだ。
最近ではただ絵を描くだけではなく、音楽に合わせてイラストのメイキング動画をInstagramにあげて、絵を描く人同士で繋がって楽しんでいる。可愛い!カッコいい!と思ったキャラクターを描き止めたり、いろいろな人からリクエストをもらって描いたり、子ども達を模写したり。その時々で書き溜めたスケッチブックは四・五冊になる。
後藤さんの創作意欲は仕事や絵にとどまらず、現在ハマっているのはレザークラフト。幼少期の手芸熱が再燃したのか、名刺入れや巻き尺ケースなど、一ヶ月も経たないうちに作品を五つ、六つぐらい作り上げた。
「私の創作はとにかく直感。作りたいと思ったら設計など考えずにバーッと作ってしまいます。仕事だとそれでは困るんで、設計図をしっかり作れるようになるのが課題です」と後藤さんは笑う。
「モノづくり女子」を合言葉に繋がりたい
後藤さんは2024年9月、東京ビッグサイトで行われた「東京インターナショナル・ギフトショー」に参加した。
参加前は「現場から離れて営業・企画をしている自分が大々的に『モノづくり女子』を名乗っていいのか」という葛藤があったが、町工場プロダクツの人々やブースに来たお客さんとの交流は刺激に溢れていたし、「板金でこんなものが作れるんですか?」「こういう製品が作りたかったんですよ!」という言葉にエネルギーをもらった。
「モノづくり女子」としてのブランディングはまだ試行錯誤中だが、展示会で興味を持ってもらえたことで、「モノづくり女子」としての形や足跡を残したい、という意欲が後藤さんの中に生まれた。
たとえば、将来的にeBラボのホームページの中に「モノづくり女子」のページを作って製作物をシェアしあったり、「モノづくり女子」のみなさんに意見をもらったり、「モノづくり女子会」をしたりとコミュニティを発展させて作り手同士の交流を深めていければ、と、夢は広がる。
「自分が主体になることに苦手意識はあるのですが、『モノづくり女子』として、徐々に輪を広めていきたいんです。そこを町プロタウンのみなさんに、お手伝いというか助けていただきたいですね」
後藤さんの「作ることが好き!」というエネルギーは、「町プロタウンxモノづくり女子」という新たなムーブメントを巻き起こしていくだろう。
取材・編集:坂本リサ
執筆:ロマーノ尚美
校正:森真弓(まあち)
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