映画『サウンド・オブ・メタル』はごはんシーンもとても美しい
先日のnoteでは、2021年映画ベストを振り返りました。その中で唯一、配信で鑑賞したのが『サウンド・オブ・メタル 〜聞こえるということ〜』という作品でした。
映画自体も本当に素晴らしい作品なのですが、本作に出てくるごはんシーンも印象深かったのでメモしようと思います。
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『サウンド・オブ・メタル』は、リズ・アーメッドが主演を務め、聴覚を失ったドラマーの青年の葛藤を描いたAmazonオリジナル作品。第93回アカデミー賞で作品、主演男優、助演男優など6部門にノミネートされ、編集賞と音響賞の2部門を受賞しています。
メタルバンドのドラマーである主人公ルーベンが突如難聴に陥ってしまいますが、観客にも聴力喪失を追体験させるような音響が素晴らしい。特に後半、本作の副題になっている「聞こえるということ」がどういうことなのか、わたしたちも体験することになります。
映画は劇場で観るのが好きですが、本作に限ってはヘッドホンで鑑賞するのも良いかもしれません。
不安、怒り、決意、安らぎ、いろんな感情の切り取り方が丁寧で、とても慎重に作られている作品だと思いました。
主人公ルーベンは、恋人のルーに勧められてデフ・コミュニティ(ろう者の文化的集団)に参加しますが、映画を観てこのようなコミュニティの存在を知れたのもの良かったなと思います。
本作には『エターナルズ』のマッカリ役のローレン・リドロフさんも、聴覚障害の学校の先生として出演しています。
▼『サウンド・オブ・メタル』のごはん▼
ルーベンが作る朝食
本作の冒頭で主人公ルーベンが恋人ルーのために作るおしゃれな朝食が登場します。緑色の健康的そうなスムージーは、シェイクする前に黄色いパウダーを振っていたのですが、あれは何だろう。ターメリック的なスパイスかなぁ。(ちなみにスムージーは「かなりまずいけど」というセリフあり)
朝食が用意できてから恋人を起こしにいくのも良いなぁ。トレーラーハウスで生活する彼らですが、好きなモノしかない狭い空間が愛を感じる。
ドーナツ
ルーベンは難聴になり、デフ・コミュニティに参加します。ここでは皆、聴こえないことをハンディとは思っておらず、聴こえないことを受け入れて過ごしています。
コミュニティ入居当初、何もするな(ただ受け入れろ)と言われますが、ルーベンはなかなか自分の状況を受け入れることができず、屋根の修理をしたり何とか普通の生活をしようと動いてしまいます。
そして提案されたのは、早朝の誰もいない静かな部屋にただいること。何かをしたくなったらノートに文字を書くことでした。ドーナツとコーヒーが用意され部屋に向かいますが、自分の感情が追いつかず、思わずドーナツを潰してしまうルーベン。
きっとこのときのドーナツは、静かにルーベンを見守っていたことでしょう(ドーナツ視点で映画を観る人はいないと思いますが)
マチュー・アマルリックが作る食事
恋人のルーの父親リチャードを、マチュー・アマルリックが演じています。ルーベンがルーを訪ねて実家へ行ったとき、ルーは外出しており、リチャードが料理をしていました。(カツレツのようなものを焼いていた、気になる)
そのあと、二人でゆで卵を食べるのですが、エッグスタンドに立てたゆで卵はすごく高級な料理に見えました。一口かじるパンも、あれは絶対に美味しいヤツですね。
脱線しますが、マチュー・アマルリックも『潜水服は蝶の夢を見る』という素晴らしい作品で、身体の自由を奪われてしまった主人公を演じています。
ルーの実家はお金持ちのようで、キッチンも部屋もすごく素敵でした。(モノが多いけど開放的ですごく良い家)全編通して、映像の色が美しいのも本作が好きな理由のひとつです。
健康的に元気にしているルーを見ると、何だか自分だけ置いていかれたようなとてつもない孤独を感じます。そしてラストにルーベンが求めた静寂。
全てを受け入れ、どこかほっとしたように見えるルーベンと同じく、観ているこちら側も泣けるくらいに安堵してしまう、素晴らしいラストカットでした。