映画『RUN/ラン』を観て、管理された食事について考える
U-NEXTに 2021年6月公開の『RUN/ラン』が入ったので、早速ポイントを使って鑑賞しました。映画ファンの間で話題になっていた作品だったので、とても気になっていた一本。
食事シーンを探すために鑑賞しようとは思っていなかったのですが、本作では母親と娘の食事シーンが描かれていました。(わたしは「ごはん映画」を収集しているので思わぬ収穫)
『RUN/ラン』に登場する食事は一見、美味しそうに見えるのですが、作品のテイストも相まって(結末を知ってからは尚更)不穏な食事に思えてしまいます。そこで今日は、管理された食事についてメモしようと思います。
本作は、全てパソコンの画面上のみで物語が展開していく「search サーチ」も話題となったアニーシュ・チャガンティ監督作品です。「search サーチ」では、行方不明になった娘の知らない一面を父親が知るという設定でしたが、今回は母親の娘への歪んだ愛情の暴走を描いたサイコスリラー。この監督は、たとえ家族であっても知らないこと、信用してはいけないことを描くのが好きなのでしょうか。
90分という尺の中で、ハラハラさせるアクションや展開に、よい具合の恐怖や気味の悪さがまぶされていて、非常によく出来た作品になっていると思いました。
娘クロエ役はオーディションで抜擢された新人女優キーラ・アレンさんという方ですが、実生活でも車椅子を用いているそう。役柄に相応しい配役がされており、素晴らしいなと思いました。母親役のサラ・ポールソンも好きな女優さんです。(「オーシャンズ8」の役柄が好き)
▼▼『RUN/ラン』に出てくるごはん▼▼
娘のクロエは、不整脈、血色素症、喘息、下肢の筋無力症といった生まれつきの慢性の病気により、車椅子生活を余儀なくされていました。糖尿病も患っている彼女に、母親ダイアンは体調や食事を気遣うシーンが描かれます。(チョコレートは食べれる個数が厳しく決まっていたりする)
郊外の一軒家に住み、庭には大きめの家庭菜園もあります。そんな彼女たちの食事は、野菜中心の様子。野菜ソテーの横には、オートミールかキヌアのような、つぶつぶしたものが添えてあり、肉や魚のようなものは見えなかった気がします。
本作でおもしろいなと思ったのは、母ダイアンがフライパンで料理をする様子を、真上から撮影するカットが2回入ったこと。
なぜ2回も料理カットを入れる?と不思議に思ったので、少し考えてみます。最初は病気のことを気遣って、健康的な食生活を心がけている母親に見えました。ただ本作のラストを知ってしまうと、これは健康を気遣う愛のある食事ではなく、自分の欲が入った管理された食事なんだと気づかれます。怖いね。
▼▼管理された食事が出てくる映画▼▼
管理された食事が出るシチュエーションってなんだろう。病院、刑務所、どこかに監禁された場合。給食もある意味、健康を考えた食事とも言えるけれど。
『オールドボーイ』ではたしか監禁されている間の15年間、餃子定食しか食べさせてもらえなかったはず。さすがの大好物でも、ひとつのものしか食べられなかったらキツイよな…。韓国では餃子のことを「饅頭」(マンドゥ)と言うらしいです。一般的なマンドゥは蒸し餃子ですが、映画では揚げ餃子に観えましたね。揚げてあるとさらに毎日食べるのはキツイな…。
そういえば、ハリウッドリメイク版でも監禁されている間に食べさせられていたのは餃子でした。
笑える作品だと『刑務所の中』や『極道めし』で出てくる刑務所での食エピソードは、馴染みのある食べ物が登場するだけあって、鑑賞したあとは思わず真似したくなる作品。特に『刑務所の中』でアルフォートが登場したときほど、人生でアルフォートを食べたくなったことはありません。
『極道めし』では、焦がしネギとネギ油をかけたインスタント塩ラーメンを真似したくなります。(千切りキャベツを先にどんぶりに入れておくのがポイント)
スペイン映画『プラットフォーム』では上の階層から巨大な台座に乗せられて食事が運ばれてくる謎の空間で、上にいる人々の残飯しか食べられないという極限状態が描かれる作品。食べる・食べないさえも管理されてしまう、非常に怖い作品でした。(残飯の気持ち悪さより、血が多く出る映画なので、そちらの注意の方が必要かも)
監禁をテーマにしている作品は多くありますが、気分が重くなるので、今日は書くのをやめておきます。
このテーマで調べていると、愛のある管理は良いけれど、やっぱり自分で好きなモノを好きなときに食べる喜びは、何ものにも代えがたい。
『RUN/ラン』の感想からは飛躍してしまいましたが、改めて美味しいものを好きなだけ食べられる環境に感謝しようと思いました。(今回は変な映画感想になってしまいました)
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