「臨床・経営・地域コミュニティづくり」全てできる環境で働きたかった。医師として”まちだ丘の上病院”を選んだ理由
※本記事は2020年夏に公開されたものです。役職等は当時のものとなっています。
専門医を取得し、臨床現場での経験を積んでしばらくたった頃。
将来についてそう悩みはじめる医師は多いのではないでしょうか。
このままスペシャリストとして、急性期医療のスキルを極めていけばいいのだろうか。それとも、今後は在宅医療のニーズが高まっていくはずだから、在宅診療の道を歩むのもいいかもしれない。もしくは、今後開業する可能性も考えて、経営やマネジメントを学んでおくべき?
そんな悩み多き医師キャリアの別れ道において、「まちだ丘の上病院」、通称 「まちおか」 の副院長に就任したのが医師 小森將史(こもりまさふみ)です。
小森がまちおかで働くことを決めたのは、ある理由があったからだそう。
今日は小森と、理事長の藤井、人事課長の加納の3人が集まり、医師のキャリア形成やまちおかで医師として働く魅力について話しました。
医師は「臨床」だけできてもダメだと気づいた
加納一樹(以下、加納):藤井さん、小森さん、今日はよろしくお願いします。
まず、noteを読んでくれている人に向けて、軽く自己紹介からはじめましょうか。僕は今この病院で人事課長をしている加納一樹です。
藤井雅巳(以下、藤井):まちだ丘の上病院を運営する「一般財団法人ひふみ会」代表理事の藤井雅巳です。
小森將史(以下、小森):副院長の小森將史です。医師として臨床にあたりつつ、医師やコメディカルの意見をとりまとめて、経営施策に活かしていく役割を担っています。
こんな感じの自己紹介で大丈夫でしょうか(笑)?
加納:バッチリだと思います(笑)。
今日、みんなで話したいなと思っているのは、医師のキャリアと、それをまちおかで歩む魅力についてです。
小森さんは、自分がやりたいことや必要なスキル・経験を考えたうえで、戦略的にまちおかを選んでくれたと思っていて。30代という医師としてのキャリアの別れ道で、何を考えて仲間に加わってくれたのかを、今日は改めて聞けたらいいな、と。
まずは、小森さんがまちおかに来るまでの経歴を簡単に聞いてもいいですか?
小森:研修医を終えたあとの2年間は、急性期医療を行う大規模病院で内科医として臨床にあたっていました。3年目の時に、100床程度の地方の小規模病院に1年間出向することになって。その出向経験が、医師に求められるスキルについて考え直すきっかけになったように思います。
加納:考え直す、というと?
小森:簡単にいうと、医師は臨床以外のスキルも身につけるべきだと思うようになったんです。
例えば、病院の経営・マネジメントスキルがその一つです。
僕が出向した地方病院は、これまで勤務した病院に比べて規模が小さかった。だから、経営やマネジメント、現場に至るまで全体の様子を把握しやすかったんです。そこで初めて、経営やマネジメント方針が、現場の医療の質に大きく影響していると身にしみて感じました。
経営やマネジメントが、現場の実態に沿ったものになっていなければ、働く人のモチベーションは下がり、混乱を招くきっかけになってしまう。
医療の質を向上させていくためにも、医師は臨床スキルだけでなく、経営やマネジメントについても一定の知識とスキルをもち、現場から経営層へ意見を伝えていく必要があるのではないかと考えるようになったのです。
加納:最近、MBAの取得を目指す医師も増えていますよね。
小森:将来開業するにあたって経営について学んでおきたい人もいるかもしれませんが、僕と同じような課題意識をもっている人も少なくはないのかもしれませんね。
そして、もう一つ医師に求められると感じたのが、地域連携・地域コミュニティづくりのスキルです。
これは周知の事実ですが、地方は医師の数が圧倒的に不足していると言われています。少ない医師で医療を支えていくとなると、一人の医師への負荷がどうしても大きくなってしまう。実際に地方で働きはじめたときに、その構造を肌で感じました。
医師の数は限られているなかで、どうしたらよいのか。
そう考えた時、病院の一歩手前の地域のなかに、住民のみなさんが健康を保持・増進できるような場が必要だと思ったんです。これを実現するためには、医師は地域の関係機関と連携したり、地域住民の方と対話をしたりするコーディネーターとしてのスキルも身につけていかねばならないと思うようになっていきました。
「臨床・経営・地域コミュニティづくり」その全てができるのが”まちおか”だった
加納:そこからまちおかで働きはじめるまでには、どのような経緯があったのでしょうか?
小森:出向を経て、医師として持ちたいスキルは徐々に明確になってきました。
でも、それを実際どのような環境で身につけていけばいいのか明確な答えがないままだったんです。
そんな時、藤井さんが代表理事をしている「一般社団法人地域包括ケア研究所」(※)の勉強会に参加して、はじめて藤井さんにお会いしました。
藤井:そうでしたね。小森さんが抱いている課題意識が、まちおかの課題意識と一致して。ぜひ一緒に働きたいと声をかけさせてもらったんでしたね。
加納:具体的に言うとどんなところが「一致している」と感じたのでしょうか。
藤井:まず、医師として診療に携わりながら経営にも参画したいという思いを持ってくれていたところでしょうか。
通常の病院は医師の理事長や院長がいて、トップダウンで経営をしているところが多いんですよね。でも、まちおかは「患者さんに一番近い現場が正解を知っているはずだ」という考えから、現場からニーズをすいあげて経営に活かす経営スタイルをとっているんです。
だから医師として臨床にあたりつつ、経営にも携わりたいという意志をもっている小森さんに加わってもらえたらとても心強いな、と。
もう一つは地域コミュニティづくりに関する課題意識です。まちおかは「地域を支える」をミッションに掲げる療養病院です。2020年秋には、地域の健康とつながりをテーマにしたカフェと、訪問看護ステーションが併設するコミュニティスペース「ヨリドコ小野路宿」のオープンも予定しています。
だから、ヨリドコ小野路宿を創り上げながら、地域を支える医療を一緒につくってくれる医師にぜひ来てもらいたいと思っていたんですよね。
小森:藤井さんからお話をいただいたとき、まちおかはまさに「臨床・経営・地域コミュニティづくり」という3つの経験が同時にできる環境だなと感じて。2020年から、副院長としてまちおかに参画することを決めました。
慢性期医療には「正解がないなかで、答えを模索する」奥深さがある
加納:これまで小森さんは急性期医療に関わってきたわけですよね。しかし、まちおかの患者さんの多くは高齢者であり、慢性期医療に携わることになります。若手医師で慢性期医療に携わる人は少ないですし、キャリアの方向を大きく変えることに、不安はなかったんでしょうか。
小森:急性期医療はエビデンスの進展が早いので、少しでも最前線を離れると浦島太郎状態になってしまう(笑)。だから不安がなかったといったら嘘になります。
でも、先程もお伝えしたように、まちおかは臨床だけではなく、経営にも地域コミュニティづくりにも携われる環境だった。中長期的に、医師として身につけたいスキルを考えたときに、ここで実践を積むのがベストな選択だな、と。そう思ったら、徐々に迷いは消えていきました。
あとは、実際に働きはじめてみると、慢性期医療は急性期医療にはない奥深さがあることもわかってきたんですよね。
加納:慢性期医療ならではの奥深さというと……?
小森:一言でいうと、絶対的な「正解」がないなかで、自分と患者さんで「最適解」を考えていく奥深さでしょうか。
急性期医療には「回復」という明確なゴールがあり、治療に関するガイドラインも大枠は明確に決められています。でも、慢性期医療はターミナルケアとしての側面もあり「本人や家族が残りの人生をどう生きたいか」が治療の方針になる。人によって、また時期によっても、治療の「最適解」は異なるんですよね。
加納:絶対的な正解がないなかで、目の前の患者さんと対峙して「最適解」を決めていく面白さがある、と。
小森:そうですね。あとは「制約」が多いなかでベストを尽くす奥深さもあるかもしれません。
急性期と慢性期は、医療報酬の形態が異なるんですよね。慢性期医療においては、投薬や注射を何回行っても、1日当たりの医療費は変わらない仕組みになっています(包括評価)。
こうした医療費に関する一定の制限があるなかで、ベストな医療は何かを常に模索する必要がある。実際に携わりはじめたことで、そんな慢性期医療の奥深さに気づいていきましたね。
経営に医師が携わる意義・やりがい
加納:次に、医師が経営に関わる意義についても話を聞いてみたいな、と。
理事長の藤井さんから見て、小森さんが経営メンバーに加わったことでまちおかにはどんな変化があったと感じていますか?
藤井:小森さんは今、臨床を行いつつ、診療部の医師・コメディカルの意見をとりまとめて経営施策に活かしていく役割を担ってくれています。それが医療の質の向上にダイレクトにつながっているように感じています。
加納:小森さんが副院長に就任してから力を入れている経営方針のひとつに「情報共有の促進」がありますよね。例えば、患者さんの治療方針について多職種で集まって話し合うケアカンファレンスを5月から開始しました。お互いの持つ情報の共有にとどまらず、各職種が専門性をもって意見を出し合い、患者さんにとってよりよい治療方針を定めていけるよう、やり方も工夫を重ねてくれています。
小森:院内の情報共有を促進したことで、ケアの質はより向上したと思っています。こうやって現場を見ていて考えたことをすぐに経営方針に反映させていけるのは、やりがいがありますよね。
また、副院長として現場で働くスタッフのマネジメントも担っているのですが、これがとても勉強になっています。クレドに沿った医療を提供していくためには、チームが同じ方向に向かっている必要がある。でも、やっぱり人の集まりなので、意見がぶつかることもあります。そういったなかで、全体として目指す方向にどうチームの意識を向けていくか。日々試行錯誤しながら学んでいますね。
加納:人によっては経営やマネジメントを学ぶためにMBAに行く人もいますが、まちおかは実践のなかで学べるのが魅力と言ってもいいかもしれません。
小森:そうですね。あともう一つ、経営メンバーとして携わっていて面白いなと思うのは、まちおかには様々なキャリアを歩んできた人がいる点です。
例えば理事長の藤井さんはコンサルティングファームや地域活性化ファンドなどの経営・運営経験があり、加納さんは医療コンサル出身。事務長の高橋さんは、エムスリーで医師採用に携わってきた経験があります。
色々な経験をもった人たちがいて、その議論に一人の医師として参画し、新たな価値を生み出していく。そのプロセスに参加できるのは、すごく刺激的だと感じています。
地域コミュニティづくりに医師はどう関わる?
加納:いよいよ座談会も終盤ですが、最後に医師として地域コミュニティづくりに関わっていく意義について聞けたらと思います。
まちおかでは、2020年秋に、地域の健康とつながりをテーマにしたカフェと、訪問看護ステーションが併設するコミュニティスペース「ヨリドコ小野路宿」のオープンを予定しています。
地域に密着した医療を実現する取り組みに力を入れていく予定ですが、小森さんが今後チャレンジしてみたいことってありますか?
小森:地域に入り込んでヘルスリテラシーをあげることにチャレンジしてみたいですね。例えば、医者や看護師などの医療関係者がコーヒーやお茶をふるまいながら、来てくれた人と健康の話をする「YATAI CAFE(モバイル屋台de健康カフェ)」という取り組みがあります。
これは、まさに日常の延長線上にヘルスケアがある。そんなふうに専門的な知識を地域に届けていく方法を模索してみたいと思っています。
藤井:「医療=病院のなかで行うもの」というイメージをこわして、医療を地域のなかに当たり前にあるものにしていけたらいいですよね。
今後、少子高齢化がさらに進んでいくなかで、一人あたりにかけられる社会保障費はさらに少なくなっていきます。限られたリソースの中で医療や介護を展開していかなくてはならない。そう考えたときに、地域コミュニティにおける互助は極めて重要になってきますよね。
加納:互助機能を地域にそなえていくと考えたとき、医師はただ目の前の患者を治療するだけでなく、地域医療をコーディネートしていくスキルが求められるようになっていくんじゃないでしょうか。
小森:そうですね。臨床だけでなく、経営も、地域コミュニティづくりも。それらが全部できるのがここまちおかの魅力なんじゃないかな。慢性期医療という若手医師からすると少しニッチなキャリアになるかもしれませんが、将来的に見るとそれを補う魅力もたくさんある。そんな面白い環境なのかなと思っています。
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まちおかでは、私たちと一緒に働く医師を募集しています。もし、ここまで読んでまちおかで働くことに興味をもってくださったかたは、ぜひこちらの募集要項をご覧ください。まずはコーヒーでも飲みながら気軽にお話しましょう。
また、「応募フォームからはちょっとハードルが高いけど、質問だけでもしたい」という方はこちらに相談メールくださいね。どんな内容でも大丈夫です。
まちだ丘の上病院 人事課 加納
✉:office6@machida-hospital.com
(こんな顔してます)
お読みいただき、ありがとうございました。