N35°35’10.07” E139°33’05.53” ラドバーン方式とクルドサック方式
好きなところはたくさんあります。
わたしは昭和35年に東京急行電鉄に入社しました。当時は田園都市線をどうひいたらいいか、田園都市線の沿線をどういう街にしたらいいかということを、一生懸命研究をしてる時代でした。わたしは大学で土木の勉強をしてきたので、東急電鉄にはいってからは技術屋としてこの美しが丘、たまプラーザの街づくりをみんなで検討をするメンバーにいれれてもらいました。美しが丘といえば、山、畑、田んぼ、それから地元の人たちからおおくのご意見を聞いたことを思い出します。そして、この美しが丘を田園都市の街のモデルにしようじゃないかと、かなり真剣に勉強をして将来像を描きました。
美しが丘三丁目を中心とした街路は、*ラドバーン方式と*クルドサック方式という方式で整備されています。いまから40年前は、これからどんどん自動車が増えるという高度経済成長の時代でした。固い自動車と柔らかい人間がぶつかると大事故になる、その事故を起こさないようにするべきではないかと考えました。自動車より人間を大事にする、歩行者に優しい道路をつくろうという考えがラドバーン方式やクルドサック方式でした。道路を行き止まりにして、末端をサークル状にすることで自動車は通り抜けできないが、Uターンを可能としたのがクルドサック方式。それからラドバーン方式は、車道と歩道を分離する施策です。現在はいろいろなところで歩行者専用道は採用されていますが、当時日本で最初にこの美しが丘で実行することになったのですが、それはとても大変なことでした。しかしたまプラーザ駅から美しが丘三丁目のほうまで、人間しか歩けない遊歩道をつくりました。もともと「ラドバーン」というのは、アメリカのニュージャージー州にある地区の名前です。そこでは、美しが丘より30年前に歩車分離の施策を進めていたそうです。歩道と車道とが分かれているので、ほんとうに交通事故ゼロかどうかは、ニュージャージー州の警察に聞いたわけではないので正確なことはわかりませんが、いまでも交通事故がゼロといわれているそうです。一方、この多摩田園都市(※)という大きな街の中で、ラドバーン方式を取りいれた美しが丘二丁目・三丁目の範囲で過去19年間のデータを見ると交通事故は少ないことがわかり、当初の目的は達成されたと感じています。思い返せば当時の行政はこの計画に大反対でした。まずはじめに、道路構造令に歩行者専用道路の考えがないのでダメだといわれました。また、火事が起きた際に救急車がはいれないということで、関係当局とずいぶん議論をした上で整備にいたりました。その結果、やはりいいものをつくったということですぐに法律が変わり、歩行車専用道が認められるようになりました。したがって、法律をより良く変える仕事ができたということで、この多摩田園都市という大きな街の中の好きな場所というと、クルドサックとラドバーンのところ、というふうに思います。
※多摩田園都市とは:川崎、横浜、町田、大和、の四市にまたがる地域。美しが丘はその田園都市のほぼ真ん中に位置している。
*ラドバーン方式:アメリカ合衆国ニュージャージー州ラドバーンのニュータウン開発における歩行者と自動車分離の計画手法。1928年に,クラレンス・スタインとヘンリー・ライトがデザインした理想都市計画住宅において採用され,ラドバーンは「自動車時代の都市」として有名になり、日本のニュータウン開発にも大きな影響を与えた。街づくりの手法のひとつで、住宅地内における歩行者と自動車のアクセスを完全に分けた歩車分離型の代表的な考え方。住宅地内を住民に関係のない車が通り抜けできないようにするために,車の方向転換が可能な袋小路(クル・ド・サック cul-de-sac)を設け,その周囲に住宅群を配置。人が各住戸から学校・公園・商店などへ行く場合は緑地のある歩行者専用道路を通る。交通安全対策と緑化スペースの確保を両立し、緑地空間を多く生む利点もあり,世界各国のニュータウン開発や住宅地開発に影響を与えた。こうした歩車分離の考え方に対して,近年では,ボンネルフ方式やコミュニティー道路と呼ばれる歩車共存を導入する住宅地開発も出現した。 参照= goo辞書:https://dictionary.goo.ne.jp/leaf/rlest/%E3%83%A9%E3%83%89%E3%83%90%E3%83%BC%E3%83%B3%E6%96%B9%E5%BC%8F/m0u/ コトバンク:https://kotobank.jp/word/%E3%83%A9%E3%83%89%E3%83%90%E3%83%BC%E3%83%B3%E6%96%B9%E5%BC%8F-154543
*クルドサック方式:(仏: cul-de-sac, /kyd.sak/)とは、住宅地における宅地割りの際に袋小路状の道路(図参照)を造るものである。フランス語で袋小路(cul:尻、sac:袋)を意味する。 参照=Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AF%E3%83%AB%E3%83%89%E3%82%B5%E3%83%83%E3%82%AF
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