「開かれたお寺」であるために。元アパレル店員のお坊さんが説く“つながり”の重要性
鎌倉への玄関口である大船には、小高い山の中から鎌倉市街を優しく見守る「観音像」があります。
こちらまで穏やかな気持ちになるような、地元の人たちから愛される大船のランドマークです。
この観音様がいる「大船観音寺」さんは、昨年の2022年7月にTwitterで投稿した「エクセルを教わる僧侶たち」とコメントした1枚の写真が話題に。タイムラインで知った方も多いかもしれません。
「大船観音寺」さんは、2月からまちのコイン鎌倉の加盟スポットにもなっていただいています。
今回は大船観音寺僧侶である諸橋健太さんに、SNSやまちのコインの活動に込める想いを伺ってきました。
28歳、結婚を機に仏道へ
ーー大船観音寺さんといえば、僧侶のみなさんの日常をポップに描く投稿がとても印象的ですよね。どんな理由でSNSを運営されているのでしょうか。
ありがとうございます! お答えする前に、こちらから少し質問をさせてください。
まず、りんさんはお寺に対してどんなイメージを持っていますか?
ーーえっと…ちょっと格式が高いというか…気軽には足を運べない場所ではあるかもしれません……。
そうですよね。じつは私も以前は同じイメージを抱いていました。
いきなり自分の話で恐縮ですが……実は私、もともとお寺の生まれではないんです。在家、いわゆる一般家庭で育って、アパレルのお仕事をしていました。
そのあと結婚を機にお坊さんになったので、お寺に対する一般的なイメージはよくわかるんですよね。
ーーア、アパレルですか! 意外ですね!
そうですよね(笑)。私のような僧侶も中にはいるんですよ。
でもお寺、お坊さんと聞くだけでどこか違う世界のような気がしてしまうんですよね。実際、私自身も同じようなイメージを持っていました。
そこでもうひとつ、質問です。りんさんの趣味ってなんですか?
ーー趣味といえば……旅行ですかね?
ありがとうございます。きっと旅行好きなりんさんは、次に行きたい行き先とかおすすめの観光地を検索して情報収集していると思います。
一方、私みたいにもともとインドアな人は、そもそも検索すらしないんですよね。でも旅行を細かく分けていけば新婚旅行、バックパッカー、日帰り旅行とかいろんなスタイルがあるわけで。
インドアな自分にも合う選択肢があるとわかれば、旅行に興味関心が湧くようになりますよね。
まず知らない世界に一歩踏み込んでもらう、その入り口になるのがSNSだと考えています。
決してお寺やお坊さんは別の世界ではありません。私たちお坊さんも修行の妨げにならなければ食事も自由ですし、旅行も恋愛もします。
近寄りがたいイメージを払拭する、新たな一面を知っていただく機会になればと思っています。
ーーだからこそ、親近感の湧くような日常の投稿が多いんですね。
ありのままを伝える。そこに賛否両論があるのは当然のこと
ーー多くの方の目に届くほどいろんな意見が届きますよね。
そうですね。投稿していると、さまざまなご意見をいただきます。
私たちのありのままの姿をお伝えしているので、もしかすると嫌いになられた方もいらっしゃるかもしれません。
情報の受け取り方は人それぞれですし、ありのままの自分を見せるということはそういうことだと考えています。
ーー投稿する内容は、どのように決めているのでしょうか?
基本的には、私が皆さんにお伝えしたいと思ったことを投稿しています。
もともとはお坊さんではなかった私の視点から、お坊さんにとっては”当たり前”のことをあえて投稿することが多いかもしれません。
過去の投稿から取り上げるとすると……ご焼香のお作法でしょうか。
お坊さんは修行のなかで修得しているので当然わかりますが、皆さんはそうではないですよね。何気なく前の方の真似をしてきた方も多いかもしれません。
そういったご供養ご祈祷における不安や疑問を解決するための内容のほかにも、お坊さんたちの日常生活を紹介するものもあります。
たとえば作務衣。お坊さんが作務を行う際に着用する服として作られているので、機能性はもちろん着心地も抜群で最近女性にも人気なんですよ。
上下で分かれているので、着回し力も抜群。上着だけ着替えて近所に外出することもよくあります。……という投稿もしました。
ーーさすが、元アパレル店員……!!
最近は、近くの園児さんに「お坊さんって1日何してるの?」と聞かれたので、1日の流れを動画にしてみました。
ここだけの話ですが、すべて私一人で撮影したので本当に大変だったんですよね……。
髪の毛を剃る浄髪のシーンは何度も撮影していて、途中から「私は何してるんだろうか……」と冷静になりました。
ーーおひとりで撮影まで! すごいですね!
とはいえ、いまだに投稿するコツが掴めていなくて……ハッシュタグも改行もうまく活用できないんですよ。
じつは私のほかに20代のお坊さんが投稿することもあるのですが、まったくかないませんね。テキストの長さや写真の撮り方が違うので、よく見てくださっているフォロワーの方にも私と彼のどちらが投稿したのかバレてるそうです(笑)。
「開かれたお寺」であるために。つながりづくりの一端を担いたい
ーー大船観音寺さんでは、観音様のライトアップなど地域に根付いた活動や啓蒙活動にも参加されていますよね。
そうですね。最近では「ピンクシャツデー(いじめ反対の日)」にあわせてピンク色に、「てんかん啓発の日」にはパープルにライトアップしました。
観音様は、困っている人を助けてくれる存在です。その想いに応えるため、普及啓発と祈りを込めておこなっています。
ーー大船観音寺さんは、2月からまちのコインに参加してくださっています。スポットになってみて、いかがですか?
まちのコインは、まち全体で幸せを作っていくための素敵な取り組みですよね。
まちのコインを使っている方も、参加しているお店も、まちを大切にしたいと考えている方が集まっていると感じます。
まちのコインが掲げる「つながりづくり」は、仏教においても重要な考えです。仏教ではすべてのものはつながりあって生きていると説きます。
人と人、人と社会、人と自然環境、それぞれがどのようにつながれば良いのか学ぶことで、そのつながりのなかで「生かされている自己」に気づくのです。
大船観音寺として、お互いに慈愛に満ちた深いつながりづくりの一端を担えることを嬉しく思っています。
ーー他のSNSとまちのコインにはどんな違いがあると思いますか?
“つながりのあたたかみ”を感じる点でしょうか。
まちのコインアプリの「応援・感謝メッセージ」で、大船観音寺に参拝で訪れた方から参拝の想い、感謝のお気持ちなど温かいお声をいただくことがあるんです。
私も、返信とあわせてクルッポをお贈りするようにしていて、このやりとりをとても心地よく感じています。
ーーありがとうございます。そう言っていただけて嬉しいです。 本日、諸橋さんのお話をお伺いして、大船観音寺さんは非常に「開かれたお寺」という印象を受けました。
ありがとうございます。そういっていただくことも多く、大変有難い限りです。ただ「開かれたお寺」であることが、本来のお寺の姿なんですよね。
誰でも気軽に立ち寄れるように、とさまざまな活動をおこなっていますが、いくらSNSで面白いと思っていただけても、最終的に問われるのはお坊さんとしての人間力なんです。
皆さんのお話にきちんと耳を傾け、想いに寄り添えるお坊さんでいられるか。その根底を忘れず、大切にしていきたいと考えています。
ーーこれからまちのコインを活用して挑戦してみたいことはありますか?
実現できるかどうかはわかりませんが……鎌倉市内のさまざまなスポットさん、特に鎌倉市内のお寺さんとは宗派を超えて協力しあうことで、SDGsの目標達成に少しでも貢献したいと考えています。
たとえば、お寺でフードパントリー※も呼びかけても良いのではと思っております。
フードパントリーは、ひとり親家庭やコロナ禍で頑張っていらっしゃる方など、食品を必要とされてる方に食品や生活用品などを無料配布を行う活動のことです。
鎌倉で食糧支援が必要な現状や目的、方法を明確にした上で、まちのコインやSNSを活用し、まずは知っていただく。
現状をご存じの方もいらっしゃるかもしれませんが、どう支援したら良いかわからない方も多いのではないでしょうか。
その入り口がお寺であっても良いと思います。賛同された方の善意がまちにめぐりめぐっていくような取り組みにも挑戦してみたいと考えています。
私はお坊さんになるまで、自分という存在はひとりで完結しているのだと思っていました。すべて自分の力で努力して、働いて、お金をいただいて“生きている”と。
しかし仏門に入り修行を重ねたことで、師匠や先輩、友人、家族に支えられて“生かされている”ことにようやく気が付いたんです。
お坊さんとしての出発は遅かったかもしれませんが、困っている方がいればひとりでも多くお役に立ちたいと思っています。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
今回ご紹介した大船観音寺では、まちのコインアプリで楽しめるデジタルスタンプラリーを実施中です。
大船観音寺スタンプラリー全達成の画面を受付でご提示いただいた方に「観音様のエコ台紙ポストカード」をプレゼント!このカードの台紙には、広島平和記念公園に贈られた「折り紙」を配合したカラフルウィッシュを使用しています。
境内のさまざまなスポットにQRコードが隠されていますので、ぜひ探してみてください🕊
まちのコインは全国20地域以上で導入しています。導入地域は公式サイトからご確認ください!
大船観音寺さんがある鎌倉では「クルッポ」という通貨が使えます。初回ログイン時に500クルッポをプレゼント🎁
▼まちのコインだからこそおすすめできる鎌倉スポットやイベントをご紹介
・まちのコイン鎌倉Instagram:@machino.coin_kamakura