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チャイ一問一灯 4.衝撃を受けたチャイは?

祖父は良くも悪くもこの世で一番面白い人だと思っているんですけどね。
話がうまいとかではなくて、存在がわたしにとって衝撃なんですね。

「俺があって、世界がある」を大前提に生きていて、たのしいことを苦もなく選ぶ。
「俺に悪いことが起こった時は、周りがすべて悪い」
一瞬地獄の底まで恨んで(じぶんが悪いのに)、ただ寝ればそれさえも忘れて次のたのしいことに向かって走り出す。
人にすごくひどいこと、それは本当の、確信を突いてしまうがゆえのことを言うくせに、当の本人は少しでも傷つけられたら一生忘れずにネチネチする。
みたいなことをして生きている人なんです。

いつか花を絞ってでてきた血の色の汁のように
祖父の「生きる」には、鮮やかな色が収まらずに垂れ流されています。

そういう一見わたしにはなさそうな衝撃が、じぶんの中にも確実にあるんだっていうことがわかっているのだから、それがまた衝撃なんですね。

あってもおかしくはないのに、じぶんには無いと思っていたものと出会った時、衝撃を受けるんでしょうか。

さて、質問に応えていきましょう。

衝撃を受けたチャイは、わたしのスパイスの先生、スパイス屋アナンのメタ・バラッツさんが淹れる「リーリチャイ」です。
リーリチャイは、バラッツさんのルーツがあるインドはグジャラート州のご当地チャイ。
ミントとレモングラスが入った風が吹くように爽やかなチャイは、それまでバラッツさんが淹れてくれたチャイの中でもひときわにおいしく、「ずるい」と思ったほどでした。

カルダモン、シナモン、ジンジャー、ブラックペッパー、クローブなど、チャイの定番スパイスしか使っていなかったわたしですが、それ以来ハーブを入れるようになったんです。そして、チャイに使っていなかったスパイスにも手が伸びるようになりました。

誰も「チャイにハーブを使ってはいけませんよ」なんて言っていないのに、なかったはずの枠が開かれたんですね。

ドライハーブよりもフレッシュハーブが持つ軽やかでパワフルなエネルギーをもっと味わいたいと思って、庭にハーブを植えるようになりました。

今ではたくさんのレシピにハーブを使っています。春になると庭に出て、指で葉っぱをこすっては香って、きょうはどんなチャイを淹れようか考えるのが幸せなひとときです。
リーリチャイに出会えたおかげでチャイをつくることにもっと興味を持てるようになったし、今もチャイをたのしく続けていられる理由のひとつになっています。

バラッツさんのチャイの思い出が、わたしのチャイの思い出を作っていってくれているのだと思うと、レシピを教えてもらうことのあたたかさを知るようです。


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