那珂川に特産品を!やまももでつながる応援の連鎖
山﨑美代子さんがやまももに出会ったのは2017年。那珂川町が人口が増えたことで市制施行することから、商工会女性部で特産品を作ることになった。これまでの経験から「地域に縁のないものは特産品として続かない」と改めて那珂川にあるものに目を向けた。そこで昔から親しまれ、ご飯のおかずとしても食卓に並んでいた『やまもも』が候補に上がった。実はこの時点ではまだ、筑紫野の生まれの山﨑さんには馴染みのない花木だったそう。
やまももは常緑樹で、特有の甘酸っぱい味と香りが楽しめる赤い木の実がなるが、この実は収穫期間が短く日持ちがしにくいこともあり、幻の果実と言われている。那珂川市の木であり、小中学校の校庭にある地域に馴染みのある植物。「特産品にするならこれだ」と思った。その時は収穫時期ではなかった為、四国からやまももを取り寄せ試作が始まった。
その後、市内でやまもも農園をもっていた方の協力を得、そこで収穫することができた。しかし昔に比べると激減している。商品開発と並行して、原料となるやまももの育成も初める必要性を感じた。その為には資金が必要となってくる。そこで助成金を得ようと、商工会と生産者、事業者をトライアングルのように結ぶ生産形態を提案。採択され『やまももプロジェクト』が発足した。
新たな出会いからプロジェクト発足
市の発足を祝うセレモニーにむけて準備が始まった。商工会女性部で50kgを収穫。その後、試作できる施設が久留米にあると知り、そこで商品開発を進めていった。やまももは種を抜いて絞り、ピューレにする。しかし種を抜くのが難しい。そんな時、この一連の作業ができる会社があると知った。ただ、300kg集まれば機械を使用できると言われ、その量に達するまで預かってもらうことに。その後も冷凍加工し保存をしてもらえることになった。
商品が出来上がると「美味しい」と反応が返ってきた。セレモニーの品として市からも配られた。「ここまで形になった。関わってくれた人の思いを繋ぐためにも事業を続けていきたい」しかしこの時点で2年が経ち、助成金を受けられるのも残り1年だった。
そんな時まち活UPなかがわに出会い参加した。「今の事業を続けていくにはどうすればいいか」「収穫にボランティアとして関わってくれる人の力も必要」そう相談した。すると、収穫や加工で南畑の人が助けてくれるという。そこで『株式会社 南畑ぼうぶら会議』と繋がりができ、一緒に『やまももの森プロジェクト』を立ち上げることになった。
株式会社 南畑ぼうぶら会議とは、南畑地区の活性化を目的に立ち上げられた総合商社で、地域の農産物を使用した6次産業化事業を行なっている。立ち上げの3名は、活性化を推進するために活動を続けきた人たちだった。
また、那珂川市の産業課を通して地域の助成金事業があることを知り、力を借りながら県にプレゼンテーションを行った。結果は採用。共同活動部会を立ち上げることとなり、『やまももの森プロジェクト』として関わった。
ここから県との繋がりができ、収穫の際にはボランティアが2日かけて10人ほどが参加してくれた。そして那珂川市や女子商業高校にも繋がりが広がり、3年前から女子商業高校の生徒が収穫を手伝ってくれるように。今では一緒に商品開発も行なっている。
言葉にすることで形になる
実は自分の中にある思いを言葉にするのは苦手。だけどこの事業を始めて、したい思いを言葉にしたり、外に出していくことで実現していった。
まずは大分県佐伯市へ研修に行った。活動の記事を見て連絡が来たのだ。
この地域では、やまももが胃薬として活躍していたこともあったそう。小規模でも種を抜く機械によってピューレが作られていた。するとそれに感化されたメンバーから「自分たちもつくろう」と機械を自作することになった。
別の機会では、やまももプロジェクトについて県議会議員と話す場に恵まれ、その繋がりからトントン拍子に徳島県へ研修に行くことが決まった。徳島県小松島市はやまももが特産品。やまもも部があり、そこが研修の受け入れてくれた。交流会では集まった12人程のメンバーに収穫や加工についても教えてもらった。ここでは木を低くし収穫がしやすい工夫がされいて、手摘みで収穫したものは加工商品だけでなくパックでも販売。どんな方法があるのか知ることは、自分たちの活動の参考になる。研修で見てきたこと触れたものが、今の活動のアイデアに繋がっている。
収穫の時期の6月末「気がついたら収穫が終わっていて、収穫ボランティアに参加できなかった」という人がいた。まち活の面談で話したところ、まち活サロンでテーマを「やまもも収穫大作戦」と題し、収穫ボランティアに参加したい人と、やまももの森プロジェクトをつなぐ場を作ってもらった。この会で第一期まち活チャレンジャーtsumugi(大場さん)や第二期の井上佳代さんが収穫ボランティアに参加してくれ、チャレンジャー同士の繋がりも広がった。
また、地元の方々が働きかけてくれたことで、新たに木の自生場所を知ることもできた。この時につながったやまももの木があるお宅で収穫させてもらい、家主さんにはお礼としてやまももの商品を贈るようになった。
言葉にしたことで、ここでも人が動いてくれた。
こういった機会から、思いを言葉にすることの重要さに気がつき、限られた時間の中で伝えたいことをどう話すか、対話を意識するようになっていった。今では昔より早口になった気がしている。
やりたいことは変わっていない
やってみたいことが生まれている
「今も課題はある」と山﨑さんは言う。今年の収穫を収納できる場所や、300kgの商品を冷凍保管できる場所が新たに必要になっている。そして、やまももは天候や熟し具合で収穫時期が変動する。自然相手なので前もって収穫の計画を立てることが難しかった。
それでも、収穫できるやまももの木が20本ほど増えた。これまでの活動を見守ってくれていた店舗から新規発注があったり、中国の方からも問い合わせの連絡が来ている。続けていくことの大切さを感じているという。
まち活に参加したことで自分の思いを話す場所ができたこと、対話を通して自分の弱点を知ったこと、そして人との繋がりが広がっていったことが、動き続ける要因になり、新しい展開が起こっていった。
最近では、クラウドファウンディングにも挑戦し見事目標を達成。この挑戦は技術的な面から難しいこともあり大変だったが、助けてくれる人に恵まれ実現に至ったそうだ。
山﨑さんは今後、やまもも農園を営みたいと考えている。そこをどんな所にしたいかと尋ねると、子ども達がやまももをちぎってバクっと食べたり、雇用も生まれて運営してくれるスタッフがいる、そんな場にしたいと言う。
事業を継続してきたことでできた新たな繋がりが、山﨑さんの新しい目標を作り出している。(まち活事務局:oioi)
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