見出し画像

那珂川市で森とまちをつなげる仕事を作り、自然豊かな環境を子どもたちに残す一歩を

服部浩一さんはこのチャレンジ実現に向けて、場を訪ね、色んな人に会い、情報を収集している。それは、まち活UPなかがわに参加したことが考えていたことを言葉にするきっかけとなり、漠然としていたものが明確になったことで自分に足りないものを知ることができたからだと話してくれた。

春日市在住で約20年前に家を建てた服部さん。木を使うことにこだわり建築家の方と約1年をかけて話し合ったのだそう。なぜ木なのかと尋ねると、幼少期は自然が身近な環境で育ち、おもちゃは自分で作っていた。お子さんが生まれてからも一緒に自然の中に出かけたり、お子さんの為におもちゃを作っていたそうで、今も木の端材や他の資材も組み合わせたオブジェや、椅子、ある時は薪ストーブ屋さんに工具箱も作ったという。
服部さんにとって木は身近でほっとする存在。だからこそ家にも木を取り入れ、心落ち着く空間にしたかった。また火を見ることも好きで、ずっと憧れていた薪ストーブも設置した。そんなお家は一見、個人宅には見えないシャープなラインが特徴で、外観は設計した方の特徴が出ているのだそう。

木で手作りした野球盤

人と自然との共存について改めて考えた

薪ストーブを購入した際、薪は3年分の貯めていた方がいいと言われた。集めるのはなかなか難しい量だが、造園屋さんが切った木を小分けしてもらったりもしているそう。そんな工夫を凝らしながら、生活のエネルギーとしても木が加わることになった。

そんな時、東日本大震災の東京電力福島第一原発事故が起き、森林のことやクリーンエネルギーの重要性、日本の社会のことを考えさせられたと話す。

日本は山地が67%を占めるほど森林に覆われている。しかし、険しい山林は機械で管理するのが容易ではないことや、加工の工程や流通のしくみから人の手が必要となるため外国の木材よりも価格が高くなってしまう。林業は木材を切り出すだけでなく、元気な山を保ち自然災害を防ぐという大切な役割も担っている。しかし、山と密接な関係にある林業は衰退。この現状から「安全な森が整備された国は、豊かな国である可能性が高いのではないか?」と考えるようになり、しくみを変える必要性を感じた。

薪ストーブ

最初は竹からゆくゆくは林業へ

今は、竹林整備をしながら製品を作ることで収入になる方法を考えているそう。木ではなく竹なのには理由がある。それは、山を持っている人よりも畑を持っている人の方が困っているのではないかと言う点。

山に生える竹は放置すると畑を侵食したり、害獣の住処にもなり得る。また、竹は地面の浅い部分で横に根を張るため、雨が大量に降ると地滑りを起こしやすい。今はまだその事実を知らない人が多いため、今後は危険な場所を把握しそれを整備できるような事業が必要ではと構想している。安全な森にする為に、竹は一つの要因だと考えているのだ。

また、別の切り口からも竹に着目している。ミリカローデン那珂川で行われた竹林サミットに参加した際に竹細工を作る団体を知り、今ではそのお手伝いもしてるそう。その団体では、切った真竹の油を抜き小物や家具を作っている。ここでも、切り出して余った竹はそのまま腐さらせ土にかえしていることも知った。

安徳台での竹整備の様子

情報に触れ、人に会ってみる

竹林や森林の整備には、切り出した材の処理の課題がある。その課題を目にしたことでより一層、人の役に立つようなアップサイクルをしたいと考えるようになり、材の加工方についての情報を集めているそう。

アップサイクル

例えば岡山県の西粟倉村にある森の学校。ここでは、廃校になった学校を活動の場とし、地域の杉や檜を使ってものづくりをしている。山を整備して山を元気にするしくみを作っている。服部さんが参考にしている場の一つだ。
また、捨てられるものに"もったいない"という視点を向け、野菜を使ったクレヨンを開発した人がいることも知った。その他にも、竹から紙や布、精油がつくられていることを知ったそう。

竹は生息力が強く整備問題がある。しかし、焼いて竹炭にしたり、粉砕して肥料にしたり、建築の資材としても注目されていたりと、加工することで多様な用途がある素材でもあるのだ。「竹炭だったら活用できるかもしれない」竹の可能性が見え始めてきた。

県外の事例の情報を集めつつ、那珂川では森林組合に話を聞きに行った。切っても収入にならない為に捨ててしまう「切り捨て間伐」があるという。木工職人の知り合いも尋ねたが、そこでも出た端材は捨てているそう。そういった曲がったり少し痛んだ箇所がある材もデザインとし、活用していけないかと考えている。

大野城市にある川畑ロクロ製作所にも見学に足を運んだ。ここでは木工旋盤を使ってお皿などの小さいものから大きいものまで作っていて、博多祇園山笠の制作にも40年前から携わっている。そして博多の木工芸品、博多曲げわっぱ。曲げわっぱを作る熟練の職人さんの元も尋ねた。今は、こうしてものをつくる技術を学ぶことで、森とまちをつなげる仕事に結びつけたいと動いている。

動き続ける原動力とは

服部さんは、定年を迎えたらどうするかを考え続けて続けてきたのだそう。そこから「死ぬまで何かをしたい」「そのためには自分が楽しむことが大事」と考え、それが原動力だと教えてくれた。服部さんにとっての楽しみは、何かを作っている時。将来、ものを作ることで収入を得られるようにしたいと考えている。

そんな服部さんが思い描いている景色がある。10年後には山を買って小屋を建て、ものづくりのアトリエとして使ったり、人が集うマルシェを開いたり、お茶を飲んだり。そこにはもちろん薪ストーブも。子どもからお年寄りまで五感を使って過ごせるような、ほっとできる場所を作りたいと話す。

「当初はやりたいことがたくさんあったけど、まち活UP那珂川を通して、今は段々と絞ることができてきた」と話す服部さんは、森とまちをつなげる仕事の形を探し、今日も活動している。 (まち活事務局 oioi)

森とまちをつなげる活動をしたい服部さん(左)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?