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那珂川市でハゼの復活を目指す!自然に関わりながらできること
ひと昔前の那珂川市で盛んだったハゼの栽培。そんなハゼの紅葉が山を染める景色を想像しながら、ハゼ栽培の復活を目指す活動を続けている増井翔太さん。
福岡藩にハゼの栽培が広がったのは、江戸時代の山田(現在の福岡県那珂川市山田)にいた高橋善蔵という人物が深く関係している。当時の薩摩藩(鹿児島)ではハゼの栽培が盛んであり、その栽培を学びに薩摩へ行った。高橋善蔵がハゼの栽培方法を「窮民夜光の珠」という書物にまとめ、福岡藩に伝えたおかげで福岡でもハゼの栽培が盛んになり、裕福となった福岡の人々は大飢饉を乗り越えることができた。
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そんなハゼと高橋善蔵の話をミリカローデン那珂川で開催された講演会で聞いたのが、ハゼを知ったきっかけだと増井さんは語ってくれた。
ハゼとの出会い、活動のはじまり
幼少の頃、川や森の中で育ち自然との距離が近く、自分にとって自然は大切なものだと感じていた。大人になってからも自然に関する仕事をしたいと考えており、テレビで見ていた登山の番組などの影響もあって、自然を撮影することもあるメディア関係の仕事についた。
その仕事の中で、ミリカローデン那珂川で開催されていた高橋善蔵の講演会を取材がありハゼの栽培を知ることになった。知った当初は、ハゼの歴史のある場所(那珂川町)にも関わらず、今は誰も栽培していないことが寂しいと感じる程度だった。
2017年頃、那珂川町にキャンプ場ができるという話を聞き、キャンプ場で働きた一心で那珂川町に引っ越した。自然に関わる何かを地域でしたいと考え、以前取材した「高橋善蔵の講演会」を思い出しハゼの栽培を復活させようと考えた。
2019年の秋、まち活UPなかがわに参加。ハゼの栽培を復活させたい!美しいハゼの紅葉を見たい!という思いで、ハゼヤマプロジェクトの活動をスタートさせた。
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しかし、計画はなかなか進まなかった。那珂川市や近郊の色々な場所に行き土地を探したり、お金の部分でも借り入れなど試行錯誤をしたが、ハゼを植樹する山(土地)は見つからなかった。
2021年の春、まち活報告会の中でハゼや活動の紹介を行い、多くの人にその活動を知ってもらう機会があった。会場で「那珂川市は日本一のハゼ栽培量になる!」と宣言した。会場で聞いていた、山を管理している白水さん、不動産会社のネクステップ、南畑のぼうぶら会議の3者から応援メッセージをいただきとても嬉しかった。
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ハゼがつなぐ運命的な出会い
ハゼを植える山は見つからないまま時は過ぎた。
2021年の冬、第一期まち活チャレンジャーの徳永さんがSDGsの活動の延長線上として、古民家の活用や自伐型林業を始めることになり、その管理する山にハゼの木を植えさせてもらうことなった。また、活動を発信しているInstagramに、大阪にいる内田さんという方から連絡があった。内田さんはハゼのろうそくの光に魅せられ、日本の和ろうそくの歴史を復活させるべく鹿児島県錦江町に移住するという方だった。
停滞していた計画が一気に加速した。
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内田さんがハゼ栽培塾を受講するために福岡県に来る機会があり、まち活UPなかがわ事務局や徳永さんを交えての懇親会を開いた。内田さんは錦江町でハゼを植える山も目星がついており、しかも翌月には古民家を改修しながら住む予定ということ。せっかくならば、みんなで錦江町を見に行こう!という話になった。
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錦江町では内田さんを含む現地で活動している方々に歓迎された。内田さんが住む古民家を見に行ったり、ハゼを植樹する予定地を見て回った。錦江町の旅から戻ってきて、まち活TV Vol.02でハゼ特集に出演し、その時のことを話した。
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その後、内田さんと話をしていく中で「ハゼが流れ着いた錦江町」と「ハゼが広まった発信点である那珂川市」でハゼの栽培を復活させよう!九州ハゼアイランドを目指そう!と意気投合し、ハゼノキ活用団体〜めぐる〜という団体を立ち上げた。
ハゼの苗木の購入費はクラウドファンディングで集め、那珂川市に60本、錦江町に210本植えることができた。ハゼには多くの品種があり、代表的なものは昭和福、伊吉、群鳥、松山、ぶどう。那珂川市の山でよく育ったのは昭和福だった。クラウドファンディングのリターン品として、ハゼのはちみつや染め物、和ろうそくを用意した。
現在、那珂川市中心に福岡近郊で、ハゼのはちみつを使った料理を味わったり、和ろうそくづくりのワークショップを行っている。。徳永さんとのコラボで竹ランタンと和ろうそくワークショップも開催した。近日、埼玉から講師を呼び日本の伝統的な手法である「てがけ」を学ぶワークショップを行う予定だ。
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ハゼの木が山を彩る未来
増井さんは今後見たい風景について、活動を始めた当初と変わらず「赤く染まるハゼの木が山を彩る風景」と語った。まち活UPなかがわに参加してよかったことは、ずっと土地が見つからず計画が進まなかったが、定期的に面談で近況を話すことで活動の振り返りができ、自分にエンジンをかけることができたことだと話してくれた。
ハゼの木が山を彩る風景を見るために、増井さんは活動を続けていく。自然が相手の活動ということもあり、さまざまな困難もあると思うが、増井さんなら乗り越えていけるはずだ。(まちかつ事務局:denden)
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