「”思いつき”がゆるされる、ほどよくゆるやかな場」okatteメンバー 山崎聖美 さん【INTERVIEW#02】
2015年4月にオープンしたokatteにしおぎは、もうすぐ10周年。まち暮らし不動産が10年を勝手に振り返る企画として、関わってくださった方へのインタビューを連載しています。第2回は、okatteオープン時からのメンバーで、現在は長野県松本市在住の山崎聖美(やまざき・きよみ)さんです。
<山崎さん>
2015年4月 okatteにしおぎオープン。okatteメンバーになる。現在も継続中。
2017年 姓が坂井さん→山崎さんになる
2023年 西荻窪から、長野県松本市に引越し
聞き手・文:川越恵子(N9.5)
※イニシャルで登場する人の注釈はokatteメンバー向けです
okatteメンバーになったきっかけ
ー まず、メンバーになったきっかけから教えていただけますか?山崎さんがメンバーになったのは、2015年、okatteができてすぐのころですね。?
はい。当時、なんだか生活がマンネリ化していて。予定調和に風穴を開けたい!と思っていた時に、知人が「こういうの好きでしょ?」とokatteの説明会と草屋根づくりのワークショップ(※1)に誘ってくれたんです。
ー okatteがオープンする直前のワークショップですね。
そうです。しかも、当時の家からokatteが近かったんです。西荻窪駅とokatteの間に自宅があって。それはもう・・・メンバーになりますよね〜。
ー なりますね〜。(笑)メンバーになってどうでしたか?
シンプルに、「思いつきを実行に移すハードルが下がった」って感じです。何かやりたいときに、ゆるやかな場があるって、ありがたい。
私は、あまり目を向けられていない地方の人や文化と接点を作るみたいなことが好きで、それと食べることが大好きなんです。旅とかボランティアで地方に行ったときに、こんな人がいるんだ!こんな美味しいものがあるんだ!と、自分の価値観が揺らぐような経験をすることがあって。それを伝えたい!と思ったときに、すぐに伝えられる喜び?みたいな。
ー okatteのメンバーになる前から、地方のことを伝える活動をされていたんですか。
そんな立派なものじゃないんですけどね。東北地方にご縁があったので、震災以降から始めました。その途中でokatteができて。私が思いつきで持ってくる地方のことをみんなすごく面白がってくれて。そのうちに私の手を離れて、私が紹介した地方の人とメンバーが直接、仲良くなったりして、ちょっとしたお見合いおばさんみたいな感じですね。
ー 自分の手を離れて皆さんがつながる様子をみていて、山崎さんが感じたことは。
自分がしたい活動を深めることができたと思っています。広げるとか、たくさんつながりができるということより、自分が関わりたい人や伝えたいことみたいなものを、より可視化するというか、絞っていくことができたかなと思います。
今も続いていること
― okatteで印象に残っていることはどんなことですか?
震災後に、岩手県釜石市のみそメーカー藤勇醸造(※2)(以下「藤勇」)さんとの出会いから、「十割糀みそ」という製品を使ったケーキ(※3)のレシピやパッケージデザインをokatteのメンバーと一緒に考えさせてもらったことかな。その商品がいまもずっと売れ続けているんです。最初は岩手を応援するイベント用のお菓子というお話だったんですが、好評で製品化されることになり、いまや釜石の定番のお土産のひとつになっています。今年釜石に行ったんですけど、イオンに平積みになっていました。
― それはすごいですね。ケーキができたこともそうですが、長く地域に親しまれる商品になっているのですね。
藤勇さんとは今も親しくて、Rちゃん(十割糀みそケーキのレシピを考案したokatteメンバー)やAちゃん(パッケージ・広告のデザインをした元メンバー)も、藤勇さん家族と交流してます。
あと、地方企画でいうと、去年のokatteオープンデー(※4 以下 オープンデー)で松本ミニマルシェっていうのをやりました。
― オープンデーに山崎さんのコーナーができたんですね。2023年に東京から長野県松本市に移住されたんですよね。
はい。私が松本に移住してから出会った、おいしいものを集めました。農家さんや、焼き菓子屋さん、あとスパイスのお店。それぞれの作り手さんに「東京でマルシェをやりたいので、これくらい送りたいです」って相談しました。まだ松本に友だちが少なかった時期なので、そうやってお話することで、”よく買いに来る人”以上の関係性を築くことができて嬉しかったです。
― 松本と西荻窪をつなげることで、松本の人と仲良くなったんですね。
そうなんです。農家さんと一緒に軽トラで、大量の野菜を運びました。ヤマトの営業所まで。オープンデーではそのお野菜が一番人気で完売したんです。その様子をお伝えしたり、野菜を買った方からいただいたお料理の写真をお見せしたりして、とても喜んでもらいました。
私は自宅で仕事をしているので、日々の暮らしでは、家と保育園の往復メインになってしまうんです。オープンデーのことをきっかけに松本の人と距離が縮まりました。それと、私が西荻にいる頃にしょっちゅう通っていたバーのマスターが、okatteに野菜を買いに来てくれたんです。愛する西荻の人との再会の場にもなりました。
人見知りの人は…
― 山崎さんからは、人とかかわっていくパワーを感じます。
うーん。実は逆ですね〜。理由がないと人に話しかけられないんです。そういう意味では、okatteは「だれかに話しかける言いわけづくり」にもってこいだなと思っています。私はokatteメンバーになってから結婚して子どもが生まれたんですが、同じくらいの子どもがいる友人がほとんどいなかったんですね。子育て関連の勉強会みたいなのに参加して、あ、またお会いしたいなと思う人がいても、LINE交換しようとか言えない。そういうときに、「okatteでビリヤニ会をするので来ませんか」って。それで仲良くなれたりします。okatteがあると、そんなふうに「言いわけ」を作れるんです。
あと、誰かと何かをするときは、自分が主催しちゃったほうが楽なんです。用意してもらったイベントに行って、そこで友だちを作るのは結構難しいけれど、主催すれば話しやすいですし、関係を作りやすいんです。
― 人見知りの人は主催しちゃったほうがいいんですね。意外です!
はい。同じイベントなら、そのほうが気持ち的に楽なことが分かってもらえるかなと思います。
それと話は変わりますが、okatteでの10年を振り返るということで、もう一つ印象的なことがあって。
― うかがいたいです!
私の結婚パーティーと、Rちゃん(※十割糀みそケーキ作りのメンバー)の結婚パーティー、どちらもokatteで開催したんです。
私が自分のパーティーを自作自演するって言ってたら、みんながノッてくれたんです。というか、いつのまにか演出から料理からサプライズが仕込まれていて。それが2017年です。そのとき、ウェディングケーキを作ってくれたり、いろいろとメインになって進めてくれたのがRちゃん。
その後、Rちゃんも結婚することになって。コロナで結婚直後にはできなかったんですけど、2022年にやっと、Rちゃんの結婚パーティーをすることができたんです。「ようやく恩返しができたぜ!」みたいな気持ちで最高でした。それも、okatteという場所があってこそ。
― 現在は松本にお住まいですが、okatteメンバーがよく遊びにくるそうですね。
そうなんです。毎月誰か来てる感じです。(笑)このあいだの週末も、Nさん(※okatte稲作部の言い出しっぺメンバー)、Rちゃん(※十割糀みそケーキ作りのメンバー)ファミリーが来ていて。先月はOさん(※カエルの人)ファミリーが来てたし、先々週はMさん(※歌うとソプラノ)が来てました。
― 先ほど、「自分の手を離れてみんながつながるのがいい」とおっしゃっていましたが、一方で西荻を離れた後も、みなさんとつながっているんですね。
確かに。先々週来ていたMさん(前出)が、なんか親戚みたいな気分だって言ってました。たしかに、ちょっと不思議な間柄です。
【山崎さんのベスポジ】
― 最後にみなさんに共通で聞いている質問があるのですが、山崎さんにとってのokatteのベストポジションをおしえてください。
そうですね、私は、ストーブのあたりから、板の間でみんながわちゃわちゃしてるのを見るのが好きです。自分はその中に入っていても、入ってなくてもどちらでもいいです。
― これまでのお話とつながりますね。
私が好きな生産者さんのおいしいものをみんなが囲んで、はじめましての人同士でも、盛り上がったりとか、「おいしいよね!」「産地に行ってみたいな〜!」とかテンションが上がってるのを見るのが好きです。